祭りのなかで
文化祭当日がやってきた
天候もよく、外はすっきりとした秋晴れだ
「姉さん!」
奈津が子犬のように走ってくる
「奈津君も佑衣兄もきてくれてありがとう」
「けっこう立派な高校だな」
佑衣は感心したように頷く
校内は文化祭モード一色で、どこか浮き足立つ
「駒千のクラスは出し物はないのか?」
「2年は展示なんだ。3年生は喫茶とかやるけど。運動部の子とかは結構出店やってるみたい」
校内をぐるりと3人で回り、それから食堂でお昼を食べた
佑衣は午後から大学に戻るらしく、奈津は父が 迎えにくるらしいのでそれまで気になるところを回ることにした
「姉さん、僕お化け屋敷入りたい!」
「お化け屋敷…」
普段から妖に触れている駒千には作られた闇の中でも色んなものを引き寄せてしまいそうでなんとなく避けているのだ
「大丈夫だよ!僕がいるから!ねっ?」
「もうすぐお父さん来ちゃうし…」
「じゃあ、僕だけ行ってくるね!待っていてっ」
奈津が走って闇に消えていく
「ちょっとまって!あちゃー…」
しばらく出口で待っていたが、なかなか来ないので受付の生徒に聞きに行く
「すいません、さっき入っていった男の子は…」
「え?中の奴らに聞いてみるよ、おーい、男の子ってもうでた?」
「どうかな…一般客も今いるから探すの難しいよ」
嫌な予感がよぎる
鞄にいる丹からわずかな振動を感じる
「すいません!おとな1人入ります!」
「え、ちょっ」
お化け屋敷のコンセプトは地獄巡りとされていた
賽の河原で子供たちが石を積み上げている
「ひとつ積んでは母を~想う~2つ積んでは父を想う~」
アナウンスがだんだんリアルに鮮明になっていくようで鳥肌がたつ
「こんなに教室広かったっけ…」
妙に人気が少ない。お化け役すらいないのだ
鞄から丹が出てくる
「駒千!ここはもう…学校じゃない!」
「学校じゃないって…ならどこなの?奈津君は?」
「別の次元に繋がったのかもしれない…」
「別の次元って…ここはじゃあ地獄なの?この川は賽の河原…」
頭がパンクしそうになる。
確かに駒千は奈津を追いかけて教室に入ったのだ
なのにこの世界はまるで現実かのようなリアルな地獄で…
血生臭い香りが周囲に充満する
昔、森羅に見せてもらった地獄絵に酷似している
「奈津君を…探さないと…」
「駒千の霊力に反応して次元が繋がったなら多分弟は無事だろうさ。それよりもしここが地獄なら早く元に戻らないと、えらいこっちゃ」
丹が言いおわらないうちに、青ざめていく
「鬼がきた…」
「おい、人間の娘がおるぞ、」
「ほんだなし。おめぇさん、亡者かい?」
赤鬼と青鬼だ。青鬼は訛り(なまり)のせいか温厚に見える
「いや、まだ娘、寿命があるな。どっからきた?」
「ほんだし、おや、兎もおるぞ。おんめぇ妖怪けぇ?」
青鬼が珍しそうに丹を眺める
丹はますます青ざめていく
「歩いていたら迷い込んでしまって…どうしたら帰れますか?」
「地獄から帰れる者はたまーにしかいねぇだぁ」
「蜘蛛の糸も廃止されたんだ。とにかく俺らは仕事があるから力になれねぇ…お嬢ちゃんも早くここから去らないと、奪衣婆ちゅうおっかない婆がくるからさ」
親切な2人は駒千に手を振って針山に消えていった
血の池からは、亡者が浮かんだり沈んだりしている
「地獄も捨てたもんじゃないね、」
1人と1匹は頷きあって地獄の地を歩きはじめたのだった




