烏天狗
烏天狗とは、文字通り、烏の羽をもつ天狗のような姿をしている
天狗といえば、山伏の衣装、袴に装束というイメージのままだ
天狗は怖いイメージがあるが、駒千にはイケメンに見える
立派なくちばしと鼻が長いこと以外は彫りが深いイケメンという感じだ
「先日は、月の宴にご招待頂きましてまことにありがとうございました。こちら我々から少しばかりのお礼の品でございます!」
ハキハキとした滑舌のいいしゃべり方は気持ちがいい
「こちらこそ、羽黒が友人を連れてきたいっていうものだから嬉しかったです。ところでこれは…」
駒千の顔よりも大きな楓の形の葉っぱでうちわのようになっている
「天狗うちわでございます」
「天狗うちわ!?あの突風やつむじ風をおこす?」
「それから、こちらの天狗下駄を。空を自在に飛ぶことも可能です。コツがいりますが」
これらは、天狗界においてかなり珍しい品々だ
お礼にしては高価すぎる
「羽黒殿にはいつも同胞が世話になっております故少しばかりのお礼の品です」
「羽黒が?」
「実は最近子供天狗たちが頻繁に拐われていて、我々も色々と策を練っているのですが。先日も怪我をした子供天狗を羽黒殿が我々の山まで送って下さったのです。羽黒殿は、駒千様のお式神様だったのですね」
「羽黒が力になったのなら私も鼻が高いです。ですが、心配ですね…実はこないだの宴に来ていた遠野一族の河童たちも襲われて知り合ったんです」
不穏な空気が流れているのは確かなようだ
烏天狗の長、太郎丸はそれから山のことを少し話を聞いた
帰り際に、丹が太郎丸にお中元でもらった酒などを持たせていた
丹もまた、羽黒が同胞に世話を焼いたことを嬉しく思っているようだ
「太郎丸さん、よかったらこれを。私が書いたお札のお守りです。気休めですが、ご無事をお祈りしています。近隣の妖怪たちにも配ってみて下さい」
「こんなに沢山…誠にかたじけない」
「うちには、少しですが妖に効く薬もあります。よかったらお持ち下さい」
「こんなによくして頂いて…必ずご恩はお返しいたします。駒千様もお気をつけください」
太郎丸は深々とお辞儀して山に帰っていった
++++++
その夜ー…
「よかったの?お酒、お気に入りだったのに」
丹が晩酌しているので、横で駒千はラムネを飲む
丹や羽黒は、駒千さえいれば存在できるが、酒や食べ物は身にはならないが好んで食べている
丹曰く、モチベーションがあがるのでまったく意味がない、というわけでもないらしい
羽黒は酒は飲まず、(烏天狗とはいえ実体は烏そのもの)新鮮な木の実や穀物を好む
酒は、森羅宛のお中元で毎年大半が酒だったり時々入浴剤だったり石鹸ギフトだったりして駒千を喜ばせている
酒を飲むのは森羅と丹くらいなのであまり減らない
妖たちのなかには酒を好むものも多いので、遠野一族の河童にも酒はお裾分けしている
河童たちは頻繁に魚や山の果物を差し入れてくれており、それらの一部を伊吹夫妻に羽黒が配達している
「構わないさ。どうせ森羅はなかなか帰ってこない」
丹はため息をついた
幼い頃から共にいるが、丹が敬語を使うのは森羅だけである
森羅と丹は仲がよく、よく2人で月見酒を縁側でしていた
「駒千も用心したほうがいい。森羅はあてにならないし、何者かが妖たちを狙っている」
「私は大丈夫よ」
「明日からちょうど、文化祭だろう。用心にこしたことはないから私も同行するよ」
「そうね…」
文化祭には奈津も佑衣もくる
用心にこしたことはない




