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お遣い屋 駒千の備忘録帳  作者: 世渡り
13/17

雪篤

怒涛の夏休みが過ぎた


梅雨明けに旅立った山崎からは式神(シキ)が届き、中秋の名月には帰ってこられないという知らせが届いた


毎年中秋の名月は山崎と過ごしていた


駒千の式神(シキ)(だん)が兎なので、毎年中秋の名月にはみなで団子を食べ、丹の誕生祝いをするのだった


今年は羽黒(はぐろ)もいるので賑やかになるはずだった


学校では徐々に10月の文化祭に向けて動き出している


年が開ければ御披露目会。


婚約話を積極的に進めているはずの千終(せんしゅう)はちっとも駒千の前に現れていないのも、駒千の悩みのひとつだった


伊吹夫妻のもとに羽黒は通い、遠野の里からは河童たちから頻繁に新鮮な川魚たちが届くので、羽黒や丹を喜ばせている


忙しくなる前に、京都老舗の呉服屋に御披露目で着用する振り袖の採寸に出かけなければなからなかったが、今からで間に合うのだろうか


とにもかくにも、週末前の金曜日に駒千は荷造りを済ませて京へと旅立つことになった


今回は羽黒は留守番で、丹を連れていく


丹はここ最近出番がないのでしょげているのだ


丹は小さくなって駒千の鞄に入るとぶつくさ羽黒に対する文句を唱えていた


京都につくと、早速例の呉服屋に行きあまり時間がないので、振り袖は作らなくてもいいと伝えたが、先方は間に合わせるので気を使わないで是非作らせてほしいといわれてしまった


先方は度々陰陽師たちの御披露目衣装をこさえているらしく、数年ぶりのしかも袴ではなく振り袖の依頼に張り切っているようだった


山崎も御披露目会だけはなぜか張り切っており、普段滅多に参加しない会合も御披露目会だけは積極的だ


「さて、どないなお色にしましょか?御披露目会やし。うんと華やかにと山崎先生に頼まれているんですよ」


女将は次々に生地を駒千に当ててゆく


結局半日以上かけて生地をきめ、採寸し、帯や飾りを決めた


当日も京都での御披露目会なので店で着付けしてから人力車で会場のホテルまで移動するのが慣わしらしい


ようやく解放されたのはもう夕方でぐったりとしていた


私服に着替え、髪を整えていると女将が入り口で客と話している声が聞こえた


「安部様。お久しぶりですねぇ。今日はちょうど山崎先生のところのお弟子さんがお見えですよぉ」


安部といえば、あの安倍晴明の陰陽師だろう


芦屋より上の陰陽師会最強の名家ではないか


「なんや、きとるんかい?」


柔らかな京都弁が品があり、声に艶があり色っぽい


「えぇ。ちょうど御披露目会の振り袖を作りに入らしたんですぅ」


安倍の坊っちゃんなら確かに老舗呉服屋とは縁があるだろう


ぐずぐずしてもしょうがないので、身支度を丁寧に整えてから暖簾をくぐる


「初めまして。翠川 駒千と言います。」


丁寧に頭を下げる


「なんや、えらい別嬪さんやないかい。おもろいなぁー。なぁあんた、よう顔見せてぇや」


ゆっくり顔をあげると、しっかりと目が会う


千終、一千。それに山崎森羅といい、陰陽師には美形が多い


色白に細い瞳が妙に色気がある


真っ直ぐに通った鼻筋に、薄い口元。


歌舞伎女役者がよく似合いそうな絶世の美男子だ


背はスラリと高く、遊びなれたような雰囲気と育ちのよさが手に取るようにわかる


白の訪問着を着崩し鮮やかな青の羽織と華やかな色味に負けないほど華のある顔立ちとあいまって、よく似合う


「駒千ちゃんね、よう覚えたわ。へぇ森羅先生にこない、別嬪なお弟子さんがおったなんて知らんかったわ。俺は、安倍雪篤(あべのゆきあつ)や。一応陰陽師、駒千ちゃんは?その年で御披露目なんてさぞ腕がいいんやろね」


「私は式神遣い(シキつかい)です」


「そりゃ珍しいな。性は翠川なんやな。なるほどな。それで式神遣いっちゅうわけか」


駒千の家系は陰陽師とは関係ない


「私の家は、陰陽師系列ではありません。なので山崎森羅先生のもとに弟子入りしてるんです」


「そうなん?まぁでも案外歴史をたどれば陰陽師と混じってたりするもんや。昔はそれこそ、そこら中におったらしいで。それに翠川って変わった字やろ?」


「カワセミの翠に川ですが…」


「まぁ俺も詳しくは知らんけど、駒千ちゃん式神は空を飛ぶのが得意なんはわかるよ。性に羽が、つくのはわりとそうやで」


確かに、羽黒を出すときもすんなり使役できた


「陰陽師と、混じってたとゆうのは…?」


駒千が尋ねると、意味深にニヤリと笑う


「そりゃ、''まぐわう''ってゆう意味や。助平やなぁ駒千ちゃん」


一瞬でこの男が嫌いになりそうだ


「すいません、私これから帰らないといけないので失礼しますね」


女将に頭を下げて通りに出る


慌てて雪篤が追いかけてくる


「へ?帰るん?お茶でもしようや~。せっかく京にきたんやから、甘味処でもいこうや。ご馳走するし」


「御披露目前に別の殿方と歩くのは、よくあをらませんから」


「なんや、御披露目がまるで結婚式みたいなことゆうなぁ~駒千ちゃんは決まっとるの?」


なかなか鋭いことを言う


「芦屋家とは縁があるんです」


「芦屋?なぁ芦屋ってまさか、芦屋の千終…なわけないよなぁ?」


「千終さんをご存じでしたか」


安倍が陰陽師のトップだとすれば、芦屋は2番手だと聞いたことがある


「千終はあかんよ。悪いことはゆわん。やめときぃ、」


急に真面目な表情になる


「あいつは鬼に取り憑かれとる」




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