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転生陰陽師は呪詛をしたくない【仮】  作者: こうつきみあ(光月 海愛)
五 サヨナラ
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生と死 7

 スズメ蜂って7月に見かけるもの?

 しかも二匹が俺の周りをしつこく飛んでくる。


「う、わ」


 思わず声を上げて腕を振り回す。霊も悪魔も怖くないが、これは流石に俺も怖い。

 一人暴れる俺を、周りのサラリーマンやOLたちが怪訝な目つきで見ている。


「あの子、やばいよね」「なにしてんの?」


 ちょ、と待て。

 このバカでかいスズメ蜂が他の連中は見えてないのか?

 一匹のスズメ蜂が俺の頭にぶつかって恐怖が一気に増した。

 確かに生きてる蜂だ。

 走って逃げても俺を追いかけてくる。


「く、そ」


 これが、奴が送った“災難”なのか!?

 これが呪いなのか?


『死なない程度の災難を相手に送り、どちらかが ″参った″というまで続ける』


 いや、これ刺されたら死ぬかもしれないだろ?!

 蜂の攻撃性がますます増してきて、確実に刺しに来た時、俺は持っていた重い図書館の本を蜂目がけて狙い落とした。

 手ごたえを感じた。


 ――……潰れたか?


 恐る恐る本を拾い上げると、そこには蜂の形をした白い紙があった。


 ――式神。

 まさかの蜂式。


 紙には、呪文や図が描かれ、陰陽師がやったのだとわかる。

 あと一匹が狂ったように襲ってくるから、俺は己の中にある恐怖を取り払い、


「おん まりしえい そわか」


 護身と蓄財の神様である摩利支天まりしてんの真言を繰り返し唱えた。

 すると、残っていた蜂も白い紙に変わってはらはらと手元に落ちてきた。

 映画とかではなく、実際に飛ばされてるのは初めて見た。

 念とかではなく、形の式。

 俺がやろうとしても簡単にはできない呪術だ。

 なぜなら、使う動物の調達はそうそうできないし、意識で作った動物に物をのせてやる式も、よほど拝む能力が高くないと不可能だからだ。

 呪詛にはこうやって目に見えるようにして、相手を脅かす方法と、誰にも医者にさえもわからないように苦しめて病気にしてしまう方法がある。

 滋岡は今回、前者で俺を脅かした。

 感心してる場合じゃないけれど、良く考えられた呪詛だ。

 スズメ蜂を怖がらない人間はいないから。

 相手が恐怖を感じれば感じるほど呪詛は効くと言われている。






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