白と黒 13
『普通が一番だ、普通の高校生に戻りなさい』
うちのお父さんがああ言ったから、あの堅い殻を突き破ろうとしてるのかな?
そう思ったら、先輩……健気。
だけど。
ちょっぴり、寂しい。
私は、橋本先輩に声かけることなく自分の教室に戻った。
その日の部活では、先生たちが堀先輩の件について皆に、「動揺しないように」「何か悩みがあるなら、失踪を考える前に身近な人に相談して」と話していた。
――失踪、てことになってるんだ……。
私は、斜め前に座っていた橋本先輩の表情を盗み見た。
相変わらずクールというか、無表情でここで何か意見して欲しいと思ったけど、さすがにそれはなかった。
おまけに、
「橋本、あと僅かな時間だか主将の件、引き受けてくれないか。お前は進学しないから時間も少し余裕ある。副主将の堀も不在だし」
「……わかりました」
二年生の時から断っていた話をすんなりと引き受けていた。
周りからはどよめきまで起こる。
「ね、なんか変わったね、あのひと」「……うん」
すっかり元の通りになった悠里も、橋本先輩の変貌に驚いていた。
部活の帰り。
今度こそ橋本先輩と話すぞ、と意気込んでいたのに、
【七時までに帰って来なさい】
お父さんからメールで先手を打たれ、忙しく帰り支度に追われる。
それでも、帰り道に会えば話をしようと思っていたのに、橋本先輩はこんな時に限ってまだ顧問の先生たちと話をしていた。
仕方なくバス停で消化しきれてない思いと一人向き合う。
とにかく。
まず、堀先輩がメッセージを見たことを橋本先輩に伝えなきゃ。
そう思って、スマホを取り出した。
話せないなら、メールでもなんでもいい。
だけど。
「……なに、この番号……」
部活中に、二回、知らない番号から電話が掛かってきていた。
電話帳に登録されてない番号って、宅配便の運転手か迷惑電話しかない。
シカトシカト。
そのままメッセージアプリを開こうとしたら、今度はなんと堀先輩からメッセージが送られてきた。
名前を見て、胸が震えた。
「先輩!?」
しかし。
……え?
【ツギハオマエ】
内容は、明らかに堀先輩からのメッセージではなかった。




