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転生陰陽師は呪詛をしたくない【仮】  作者: こうつきみあ(光月 海愛)
四 未解決事件 second
71/225

白と黒 9

 

 山城は重い口調で続けた。


「私、予知とかそういうのは全くないんですけど、どちらかの事件が先輩の誕生日前に、先輩に悪影響を与える気がするんです」


「悪影響?」


「はい……」


 歯切れが悪い。きっと、俺が死ぬって言いたいのかな?

 でも、それ、当たってる。

 俺が十八歳で死ぬのは間違いないから。

 他人の間近の死期は見えるのに、己の死期がわからないのが陰陽師の皮肉なところ。

 俺が、誕生日のどのくらい前に転生してしまうのか、それとも当日なのか、どんな死に方をするのか。そこまでハッキリしてないから、俺はまだまともな精神でいられるのかもしれない。


「だから、絶対に一人で無茶しないでください。今年の誕生日も、来年の誕生日も一緒にお祝いしたいので!」


「え……」


「あ、いえ!後輩としてです! なんか凄いこと言っちゃった! じゃ、気を付けておかえりください!」


「……あぁ」


 物凄い勢いで社務所に戻っていく彼女の背中を見送った。

 薄暗いので、山城の表情はあまりよく見えなかったが、彼女の照れた様子はわかった。まるで告白でもしたみたいだ。


 来年、か。


 前世で、安倍吉近として参加した、東北院の念仏会ねんぶつえでの歌合。

 巫女であった“彼女”が詠んだ歌は――


『こぞ(去年)の春逢へ君に恋ひにて 桜を思ふと よいも寝なくに』


(去年の春お逢いしたあなたに恋焦がれて桜を思うと夜も眠れない)


 自分にあてた恋文だった。

 思えば大胆な女性だった。そういうところにも惹かれていた。

 俺は、その歌にこう返した。


『あらざらむ 願はくは君のそばにて春死なむ望月もちづきの頃』


 彼女はハッと顔を上げた。

 周りの者も騒然とした。

 あまりにも有名な歌をパクったからではない。

 父から陰陽道を継いでいた、まさに、これからだという男。

 そんな若い男が詠むにしては、突拍子もなく、彼女への返しともとれず、何より不吉だったからだろう。


(もうすぐ私は死んでしまうでしょう。願うなら春にあなたのそばで死のう。満月の頃)


 滋岡川仁に呪いをかけられた後で、来年の歌合の頃は会えないことをわかっていた。


 前世の記憶は、まだ曖昧な部分も多い。

 それとも死に間際に、走馬灯のように思い出されるのか。そして、また忘れて繰り返すのか?

 でも、どうせなら、現世でのあたたかい思い出で埋め尽くされたい。


 神主の言うように普通の思い出を作りたい。


 俺は、あのマンションで遺棄された女性の事件には関わるまいと決めた。

 とても気になる事件だったけれど、今のところ、マンションの入居者がいないというだけで、さして自分には影響がないと思ったからだ。

 それに正真正銘の陰陽師である、滋岡道中がいずれ解決に導くだろう。


 ただ、堀のことは気になった。

 能天気でチャらいヤツだけど、俺が冷たい態度でどんなに周りと距離をとっても、アイツだけは気にせずズカズカと入り込んできた。

 正直で、わかりやすくて嫌いじゃなかった。


 なので、何とか行方を突き止めたかった俺は、気になった、あの赤い蛇を調べてみることにした。




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