一 つかれている 6
「予知……?」
「そう、遠足の時にさ、もうすぐ雨が降るって、天気予報でも言わなかった豪雨予測したり、不吉にも先生の訃報を言い当てたり……」
「偶然じゃないんですか?」
また寒気が戻ってきそうな話だ。
「んー。かもね。皆もそう言ってた。でも、俺はずっとあいつには注目してる。マジでパーフェクト男じゃん、俺、奴みたいになりたいもんな」
「憧れってやつです?」
「そう言うとなんかキショいけど。目標?」
「あ、だから、堀先輩も弓道部に入ったんですか?」
「わはは、そうかもね」
おどけたように笑った堀さんは、すぐに顔を曇らせた。
明るい堀さんは、皆の盛り上げ役みたいなところもあるし、部での成績も良かったのだが、少し前、事故を起こしてから腕が振るわなくなった。
「俺にもおじさんの生霊とか憑いてないか、後で千尋に訊いてみよ」
練習中に、彼が放った矢が副顧問の先生の胸に刺さったのだ。
その副顧問の先生は全治一週間の軽傷で済んだものの、ローカルニュースや新聞に載ったりして、当時の堀先輩は相当落ち込んでいた。
それからフォームが崩れたり、的中率が下がったり、何となく元気もなくなっていった。
「お疲れ様でしたー!」「もう遅いから寄り道すんなよー」
学校へ着いた頃には体調がかなり良くなっていた私は、バスから降りて橋本先輩の探したけれど、あの人は風のようにいなくなっていた。
……お礼が言いたかったのにな。
でも良かった。
もし、あのまま調子が悪かったら、神主であるお父さんにお祓いをお願いしようと思っていたから。
ただ、お父さんに霊能力はない。
私は少しだけ霊感あるけど。
そんな神主がするお祓いなんて意味があるのかなって、実はずっと思ってた。
神職の家の娘なのに、神道とやらは全く信じていなかったのだ。