白と黒 7
一見、善良そうに見える、おそらく六十代の政治家。
しかし、オーラが見えない。
白なのか、黒なのか、それとも――。
黙り込む俺に、神主である山城の父は言った。
「君が、霊能あるのは分かる。しかし、あまり色んな人を視ないほうがいい。霊能ってのは無ければ無い方がいいんだ。最後は廃人のように朽ち果てて亡くなった中途半端な霊能者を知っている。それは昔からだよ」
父である安倍晴明もそうであったと、あの滋岡道中も言っていた。
「そうですね……こんなんじゃ、誰一人救えない」
俺が力なく言うと、山城の父が俺の肩を軽く叩き、一言残して、部屋を出て行った。
「普通が一番だ、普通の高校生に戻りなさい」
普通の高校生……。
頭の中でリピートした。
そもそも、“普通”がわからない。
「先輩……?」
山城の声に不安が宿っている。
「堀のことは気になるから、できる限り捜索に協力するけど」
顔を上げて、無理に笑顔を作ろうとすると、頬が引きつった。
「父の言う事は気にしないでください。自分に霊能の欠片もないから嫉妬してるんですよ」
「いや、神道極めるなら霊能は邪魔だから」
十八歳の誕生日まであと五ヶ月。
俺は、前世や陰陽道の事を忘れて、普通の高校生としての時間を楽しめるだろうか?
今からでも家族や友達と、思い出が作れるだろうか?
でも、もう、手遅れな気がした。




