白と黒 6
「防犯カメラの映像を見たい、できたら過去の物も」
山城は社務所に俺を連れていき、中へ通した。
「堀君は、もしかしたらうちの事に巻き込まれたかもしれないね」
山城の父が、俺に映像を見せてくれた。
「参道のほうは全く映ってないな」
しかし、昼間に参拝に訪れた客で何となく気になる者がいた。
夏なのに、ネクタイをした、いかにも固い仕事の年配の男性。
二礼二拍手一礼を慣れた様子でやる。
お賽銭も小銭ではない。
一万円札。
よく見たら、その男性を見守る男達の足が離れた所に映っていた。
「この人、よく来るんですか?」
前の映像を見ても、周期的に訪れている。しかもほぼ朝方。
山城の父が、パソコン画面を覗き込んで、
「あぁ、そうですね。この方は定期的に来られるんですよ。毎月、一日かな。顔が良く見えないので何とも言えませんが、きっと政治家ですね」
「政治家……」
「こんな無名神社に政治家とか来るの?」
山城が驚いている。
「無名ってことはないぞ。ここは道開きの神様、猿田彦大が祀られてるからな」
彼女の父が言うように、経営者や政治家など、成功した者ほど神社に足しげく通う。運を信じ、感謝の心を大切にしてるからだ。
「先輩、この政治家らしき人から何か感じます?」
山城の問いには直ぐ答えられなかった。
なぜなら、この男性自体に、強靭な結界が張られていたからだ。




