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転生陰陽師は呪詛をしたくない【仮】  作者: こうつきみあ(光月 海愛)
四 未解決事件 second
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白と黒 3

 保護者にも連絡が回って来たのか、翌朝、母さんが心配そうに尋ねてきた。


「千尋の友達の堀くんが行方不明なんですって?」


「ただ、遊びに行ってるだけかもしれないけど」


「しかし、無断外泊するような子じゃないだろう? あそこの家庭はちゃんとしてる。夫婦そろって公務員だし」


 父さんも新聞から目を離して割り入ってきた。公務員って関係あるのかな? と思ったが何も言わず、朝食のトーストをかじった。


「母さん、俺、主食は米がいい」


「こんな時に呑気な子、前は″朝はパン!″って言ってたのに」


「それ中学生の時だろ」


「そうだったかしら? あなたの中学生の時がどんなだったかあんまり記憶がないのよね。あまりにデキすぎた子だったから」


 その時すでに、己の運命を感じ始めて、皆が通る反抗期も素通りした。

 思えば、親の手を煩わせたり、感情をむき出しにして訴えたこともない。

 まさしく、“朝はパン”くらいだ。


「千尋も気をつけろよ。どんなに治安のいい国とはいえ拉致や誘拐はあるからな」


 父さんがやや険しい顔になった。

 不動産業を営んでいれば、表沙汰になってない、住人やオーナーの蒸発や行方不明事件なども耳に入ってるのかもしれない。

 俺は、A子のことをそれとなく訊いてみた。


「この前、教えてくれたマンションの、遺体で発見された若い女の人って、子供いなかった?」


「……なんだ、そんな前の事件が気になるのか?」


 珈琲を啜った父さんの顔が渋くなった。


「いや。だって、あのマンション、人が入らないと結構大変なんだろ?」


「うん。あ、そうそう、あの被害者の女性は元々あのマンションには住んでなかったんだ。近くの古いアパートに娘さんと暮らしてたようでな」


「アパート?」


 あのマンション近くにあったか?

 もし、あったなら、何故、俺は何も感じなかった?

 よほど難しい顔をしてたのか、父さんが俺の顔を覗きこんで言った。


「今はないぞ、数年前に取り壊されて更地になってる」


「そう……」


 だから、A子は彷徨ってるのか?

 娘がいたアパートを探して。


「じゃあ、子供は、誰か引き取ったのかな」


 ボソッと言ったつもりだったが母さんには聞こえていて、「そんな見ず知らずの子供より、堀くんのこと心配しなさいよ」と、俺をたしなめた。


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