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転生陰陽師は呪詛をしたくない【仮】  作者: こうつきみあ(光月 海愛)
四 未解決事件 second
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白と黒

二つの事件の繋がり

 ――では、滋岡さんから見た、【陰陽師】とはなんなのか、一言でも、具体的にでもいいので教えてください。


 滋岡:「一言で言うと、昔ならグレーな存在だった、というべきですかね」


 ――これまたアバウトな表現ですね。


 滋岡:「すみません。言葉足らずで。多分、メディア化されたものの影響で、安倍晴明なんかは苦しむ都人のために式を駆使して勇敢に“邪”や“悪”と戦う陰陽師だというクリーン、すなわち白なイメージだと思うんですが、そればっかりじゃなかったってことです」


 ――それは、呪詛をやっていたから、ということですか?


 滋岡:「そうです。貴族同士の出世争い、天皇の世継ぎ問題に絡んで、人の妬み、恨みを請け負って政敵を呪詛したり、逆に呪詛された依頼主に憑いている生霊を祓って送り主に戻したり、そういった人間の欲の渦の中で仕事するわけですから、クリーンな精神だけでは成立しないんですよ」


 ――まぁ、ほぼほぼ黒い依頼が多かったでしょうからね。


 滋岡:「それもクールにやってたと思います。私的感情など捨てて。呪詛の成否は、専門的な知識と気力と念力が必要となってきます。呪詛する相手にも専属の祈祷師や陰陽師がついて結界を張ってるので、呪がぶつかりあう、まさに死をも覚悟した闘いが続くんです。そういった闘いを繰り返すうちに朽ち果てたのが安倍晴明なのです」


 ――滋岡さんが先日出された著書によると、安倍晴明を破滅に追いやった陰陽師が、祖先の滋岡川仁だったと。


 滋岡:「そうです。藤原道長と対立していた貴族、もしくは関白となって10日で没した兄の道兼みちかねや道長の権力に屈して退位した三条天皇に依頼されて呪詛をしたようです。史物にハッキリと記されてませんが、我々子孫はその話を信じてます。呪詛合戦で打ち勝った滋岡川仁は、安倍晴明のライバルと名高った蘆屋道満あしやどうまんという有能な呪術師の影に隠れて、民のためにその力を駆使したのです」



 その夜。

 現代の陰陽師、滋岡道中が、ある雑誌のインタビューに答えている記事を読んだ。


 ――民のために、か。


 由緒正しい陰陽道も、明治時代には迷信として政府により禁止されてしまうが、それまでは、安倍晴明直系や、土御門神道を中心に江戸時代までは隆盛を誇っていた。

 特に、正統派陰陽師が宮廷陰陽師として萎縮してしまったのに対し、インタビュー記事に出てきた蘆屋道満や、滋岡川仁などの傍流,亜流は民を巻き込んで大きなブームを作っている。

 たとえば、室町時代の七福神信仰、こっくりさん、方位・家相判断、字画姓名判断も陰陽道が大衆化して生まれたものだ。


 その滋岡の血を引き継いだ彼が、俺と同じように民間人――特に貧困層の――が犠牲になった未解決事件を霊能で何とか解決しようとするのも分かる気がした。

 滋岡道中が、あのマンションで遺棄されたデリヘル嬢の事件を追うYouTubeの動画も見つけた。


 《この事件の犯人は、多分、身内に大物がいます。僕は日本のタブー、いや、世界のタブーを破ってしまうかもしれません》


 俺が山城に貰った似顔絵で霊視する前に、彼は犯人像を捉えているようだった。





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