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転生陰陽師は呪詛をしたくない【仮】  作者: こうつきみあ(光月 海愛)
三 未解決事件
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男を食らう鬼 23

 私達があまりにじっと見ていたからなのか、滋岡という現代の陰陽師が気が付いてこちらを見た。

 しかし、特に気にも留めない様子で、再び建物を見上げて、何かブツブツと独り言を言っている。


「あんな有名人が、こんなホテルに何用なんですかね? しかも一人で」


「俺らと同じ、きっと引き寄せられて霊視でもしてるんだろう、祝詞らしきものも聞こえた」


 橋本先輩もその人に背を向けて、ようやく歩き出した。


「じゃ、やっぱり陰陽師なんですね! 恰好がホストみたいだから違和感ありありだけど」


「そう、奴は正真正銘の陰陽師の子孫。どんなにメディアがインチキだとか“自称” だとか揶揄してもその血と道を引き継いでいる」


「なんでわかるんですか」


「顔を見たらわかる」


「うーん……」


 遡れば千年とか昔の、ほんとに実在してたかもわからない(私は、物語でしか知らない)陰陽師。

 どんな顔をしてたら、それだとわかるんだろう。



 その夜、橋本先輩は家まで送ってくれた。

 この前も感心したのだけど、橋本先輩は鳥居をくぐるとき、社殿に向かってちゃんと一礼していた。

 やっぱり、普通の高校三年生じゃない。

 霊能以外に、何か、私達には想像つかない秘密を持ってる気がしてならない。


「あの、つかぬことを訊いてもいいですか? 本当につまらないことです」


「ん? なんだよ、あらたまって」


 こう言えば途端に構えちゃうから、この人はやっぱりガード固いなぁとも思ってしまった。


「橋本先輩って、何か、その……実は重い病気だったり、します?」


「なんでそう思う?」


「この前、一年生の女の子に″誕生日にはこの世にいない″って言ったと聞きました、それで……」


 皆は、女の子をふる時の先輩なりの決め台詞だって言ってるけど、私は、そうは思えない。


「心配してんのか?」


 橋本先輩が珍しくイタズラな顔をして私を見た。


「そ、それはそれなりに! 尊敬してる先輩だし、あ、こ、……――」


 ″憧れている″ と言おうとして止めた。

 そんなこと言ったら次の日からシカトされそうだ。


「ご心配なく。俺は、病気ではないよ。でも、山城も知ってるように、近頃、俺は厄介な事に足を突っ込みがちだから、それによって、命を削ってるような気がしただけ」


「……本当に?」


「あぁ」


「……そう、ですか」


 何となく誤魔化された気がした。

 何か、悩みを抱えてるなら、私みたいな役立たずでも打ち明けてほしい。


 別に自分が少し霊感あるから、というだけでなく、先輩とはもっと繋がっているべきだと、何故か本能的にそう思ってしまう。


「じゃあ、おやすみ。今日はありがとな」


 先輩が、闇に不似合いな、爽やかな笑顔を見せた時だった。


 二人のスマホが同時に鳴った。


 それは、弓道部のグループメッセージだった。



【三年の堀 賢吾くんが昨夜から帰宅してないと保護者より連絡ありました。電話は繋がらずメッセージも既読になりません。彼の行方を知ってる方、身辺の異変、どんな些細な事でも構わないのでご存知の方は弓道部 顧問もしくは学校までご連絡ください】


 私と橋本先輩は、顔を見合わせた。


 まさか――







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