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転生陰陽師は呪詛をしたくない【仮】  作者: こうつきみあ(光月 海愛)
三 未解決事件
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男を食らう鬼 18

「……すまない、こんなの一緒に視て貰って……」


 橋本先輩が謝ったのは、私の目から涙が溢れていたからだろう。

 熱かった先輩の手が私から離れる。


「……この犯人、まだ逃げてるんですか?」


 なぜだか、悲しくて悔しくて仕方ない。


「逃げてもない、かもしれない」


「……どういう意味、ですか?」


「そんなことより、山城のアイメイクが取れて怖いんだけど」


「え」


 急いで自分の目元に触れた時だった。


「お客さん! 困りますよ」


 エレベーターから従業員らしき男性が降りてきて、部屋に入らないなら鍵を返せと言ってきた。

 私たちの不可解な行動がモニターに映っていたんだろう。


「それでも休憩二時間分、三千九百円払ってもらいますけどね。それとも君たち、冷やかし目的の高校……」「入ります!」


 疑いの目を向けられた橋本先輩は、再び私の手を取ってすぐそばの部屋の鍵を回した。






「かかと、これでくっつくかな」


 ホテルの一室。

 小さなソファーに並んで座り、橋本先輩が、取れかけているパンプスのヒール部分に接着剤を付けてくれている。私の脱いだ靴を、だ。

 それだけで、とても恥ずかしい。


「あ、もしくっつかなくても、姉、それ殆ど履いてなかったんで大丈夫かと……」


「大事なものだから滅多に履かないんじゃないの?」


「そ、そうですよね」


 はは、と掠れた笑い声を出して、後で姉に叱られることを想像したらゲンナリした。

 はぁ、と擦りむいた膝小僧を見たら、伝線したうえに、けっこう汚れていた。


「お腹空いたな、ルームサービス頼んでみようと思うけど、山城は何が食べたい?」


 パンプスの修繕を終えた先輩が、テーブルのメニューを眺めている。

 先輩、余裕だ。

 もしかして、こんなところ、初めてじゃない?

 それに引き換え、緊張しっぱなしの私はお腹も減らない。


「先輩と同じものでいいです。……あの、ちょっと、足、洗ってきていいですか?」


「いっそのこと、化粧も取って風呂でも入ったら? それで時間潰せる」


「はぁ……」


 時間潰せる、か。





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