男を食らう鬼 9
おそらく、この写真のマンションが、殺人現場じゃなかったことと、そもそも実際の写真を記事に載せてなかったせいだろう。
なので、もう一度現場に行ってみようと、山城たちを振り切り、現在、あの繁華街にやって来ている。
制服だから、あまり遅くまではいられない。
自転車を例のマンションの駐車場に置いて、霊がいそうなところを歩き回った。
途中、ビルの地下駐車入り口付近に子供の霊がいたので、真夏なのに寒いというから、これまた近くの自販機で奇跡的にあったホットココアの缶飲料を買ってやった。
何も知らなそうなので、尋ねることもなく通り過ぎる。
パチンコ店。
怪しいマッサージ店にマンガ喫茶。
ネオンが煌びやかに光る所には気配すらなかった。
しかし、そういった騒々しいところの路地裏では、やはり、この世でないモノを多く見かける。
その中で、俺に何か訴えている女の霊に気が付いた。
極めて薄着の、下着のような衣類を纏い、乱れた髪には何か液体がべっとり付いている。
――A子だ。
A子は、悲しげな目で俺を見つめたまま微動だにしない。
言葉のような悲鳴のような、何かのざわめきのような……伝わってくる感情は、とにかく胸をしめつけられる寂しさと無念さ。
―――″自分の家に帰りたいのに、帰れない″
″突然、男に首を絞められて、そこから動けなくなった″
″男″ ……。
「……あなたは、自分を殺した犯人が誰だか知ってるの?」
俺が問うと、A子はフッ……とまたどこかに行こうとした。
「待って!」




