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転生陰陽師は呪詛をしたくない【仮】  作者: こうつきみあ(光月 海愛)
三 未解決事件
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男を食らう鬼 7

 俺の問いに反応したのは、おばあさんの霊だった。

 虚無な顔をして、ただ、そこに居座ってるだけの無害な霊。

 建物と建物の間の湿った薄暗い場所や階段なんかには、こういう霊が溜まりやすかったりする。


「そう、今はここにはいないんだね、どっちに向かったかわかるかな?」


 おばあさんが、繁華街の方を指した。


「ありがとう」


 無気力な手が、不意に俺の腕に触れた。


 ――冷たい。


 そこから体温を奪われていくのがわかる。


「喉、渇いたの? 水でいい?」


 しかし、おばあさんはお酒が良いと言った。

 そして、頭が痛いと。


「あぁ、ごめんね。俺の持ってるお札のせいかな」


 俺が持ち歩いてる護身用のお札はやはり、それなりに効果があるようだ。


「俺、まだ未成年でお酒、買えないんだよ。おばあさんが生きてた頃と違って法律が厳しくなったんだ。代わりにエナジードリンクで我慢してな」


 俺は、マンション敷地内にある自動販売機から、一番量の多い飲料を買って、タブを開けておばあさんの前に置いて行った。

 繁華街に向かいながら、リンゴジュースにしとけばよかったかな、とちょっと思った。


 繁華街は迷路のように込み入り、そしてかなり広い。

 先ほどの泣いていた霊を見つけるのは、なかなか困難を極めた。

 なぜ、死んだ場所から離れて、こんな所をさ迷っているんだ?

 波長の合った俺を、誘い込んでいるのか?

 先ほど少しだけ霊視したマンションの殺人現場から、壮絶な惨殺シーンは見られなかった。

 ということは、泣いていた女は、あそこで殺害されたわけではないのではないか――


 時間があれば、あの場所での過去の事件を検索し、検証することも出来るが、本来、今日の俺の目的は母のために花を買うこと。


 時間は限られていた。








 


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