男を食らう鬼 3
……″この世にいないから″?
引っ越していないから、とかじゃなく?
「凄いフり方だよなぁ。そんなん救いようのない返事されたら、相手の子は何も言えないよ」
堀先輩は、やっぱり千尋はタダモンじゃねーと笑っていたけれど、私は、その真意が知りたくてたまらなかった。
まさか。
まさか。
橋本先輩、何か重い病気だったりしないよね?
カーン!と、橋本先輩の放った高い弦音と、矢が的に当たるパン!という爽快な的音が道場に響き渡る。
それを見据える凛とした佇まいには、強い生命力さえ感じる。
橋本先輩は、病気なんかじゃない。
そう思いたいけれど……。
――『不吉にも先生の訃報を言い当てたり……』
合宿の時に、堀先輩が話してくれた橋本先輩の予知能力のことを思い出せば、未来によくない事が起こるのではないかという不安は消せなかった。
「おい、堀。お前、さっきから喋ってばっかだな。三年は出られる立※は残り僅かだろう。もっと気合い入れてやれ!」
私と話していた堀先輩は、早速、副顧問の先生に目をつけられて、立練をさせられていた。
堀先輩は、やはり調子がふるわなくて、「残念」な結果になっている。
おまけに、つがえた矢を落としてしまう「失矢」までやってしまい、先生に凄く怒られて気の毒だった。
私は、スランプを脱したけれど、堀先輩は事故のトラウマをまだ払拭できていないようだった。
※試合のこと




