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転生陰陽師は呪詛をしたくない【仮】  作者: こうつきみあ(光月 海愛)
二 渦
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ひと を 呪わば穴ふたつ 28

 何者って言われても、今の俺は普通の高校生、橋本千尋でしかない。


 前世で父から伝授したはずの陰陽師としての力も、覚醒しきってない。中途半端な霊能だけが高まり、浄霊どころかその場を浄化することしかできない。


「少しだけ霊感がある、そんだけ」


「じゃ、さっきやってたのなんなんだ? 最後にも結界張るってお星さまみたいなの描いてただろ? あれは忍者の術か?」


 適当にあしらおうとしたら、


「堀先輩、結界を張るってそんなに珍しいことじゃないんですよ。意外と日常に溢れてるんです」


 山城が少し得意そうに話した。


「例えば、有名なのが料理を前に、お箸を横に置く。これも神道でいう結界なんです」


 堀が、途端につまらそうな顔をする。


「おはしぃぃ?」


「そうです。料理は神様に捧げるものという考えが昔からあって、手を合わせて “いただきます” と箸を持つことで結界を解いて感謝して食べ物を頂く。他にも、落語にも結界があるんです。舞台に登場した時、座布団に座ってお辞儀しながら扇子を横に置くあれです。あれでお客様という領域との結界を作って落語の話に引き込みしやすくしてるんですって」


「へぇ……なんでそんなこと山城が知ってるんだよ」


 日常の結界にはあまり興味なさそうな堀は、山城を怪訝な目つきで見ていた。


「陰陽師って知ってます?」


 山城がさらに得意げな顔になった。


「あぁ、なんか昔映画とか流行ったな。アベノナカマロだっけ? あ、綾小路きみまろ?」 


「違います。安倍晴明です」


 ここで父の名前が出てきて、急に居心地が悪くなってきた。


「じゃ、俺、用があるから。先いくわ」


「あ、逃げた!」


 自転車の鈴を鳴らし、まだ陰陽師について話す二人を置いて行った。

 途中、遊歩道を押して上がり、夕焼けに染まる町全体を見回した。


 ――東京都。


 東京の西部、八王子市にある高尾山、日野市にある金剛寺、檜原村の浅間嶺、さらに昭島市。


 ここにもとてつもなく大きな結界が作られていることを、現代人のほとんどは知らないだろう。



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