ひと を 呪わば穴ふたつ 27
「井川次第では……って、悠里はどうしたらいいんですか?」
「霊と波長を合わせないこと」
橋本先輩は悠里の目を見つめて続けた。
「誰かを妬んだり恨んだりすれば、同じ感情をもったまま成仏できない霊と波長が合い、心身とも不健康になった時、それに憑りつかれやすくなる。逆に言えば、強い健康的な心を持てば、そう簡単に霊と波長が合う事はないはずだ。ここに来る霊は生霊とは違う。そんなに力は強くない」
また、誰かに生霊を飛ばしたりすれば、心や体に隙ができる。
自分と他人を比べないで、自分の世界を持てば妬みも生まれない。
折角だから弓道に専念してみろ、と橋本先輩は最後にそこへ結界を張っていた。
※ ※ ※
「あとは朝美ちゃんが元気になることだなぁ、退院したら学校に戻ってくるかな?」
井川の家を出て、ノロノロと歩いていた堀がスマホを取り出した。
「あ、″骨が繋がったらリハビリ開始♪″ だって。とりあえず良かった」
長野朝美の再開したSNSの投稿を確認しているようだ。
「……それにしても悠里の好きな人って誰だったのかな、結局訊きそびれちゃった」
少しだけ元気を無くした山城リリは、軽くため息をついていた。
俺は、この時、おそらく一人ほくそ笑みを浮かべていただろう。
女ってどんな時でも、″恋愛″ だよな。
こんな時にでも、誰が誰を好きだとか気になるもんなのか。
「私、てっきり悠里の好きな人は堀先輩だと思ってたのに」
その発言に、堀が、「なんでなんで?!」と食い付きまくる。
「もしかして、あいつ、俺のこと、カッコいいとか言ってた?!」
「そうじゃないです。前に、悠里が、″私、ダメな男が好き″ って言ってたから……」
山城が真面目な顔をして答えるも、堀が悲しそうに顔を崩していた。
「おっまえ、俺のこと先輩と思ってねぇだろ?」
「じゃ、俺、こっちだから」
分かれ道。
自転車に股がって、二人を置いて先に行こうとしたら、
「さっきからニヤニヤしてるお前、橋本千尋!お前ってナニモンなんだよ!」
また、堀が俺の自転車の荷台を掴んで絡んできた。




