ひと を 呪わば穴ふたつ 24
「橋本先輩……」
私は目で訴えた。
私は何も出来ないこと。
悠里の心が今は大きく欠けて、そこになにかがつけ入ってること――
橋本先輩は、言葉を発せずとも感じ取ってくれたのか、小さく頷いてこう言った。
「この家、最近建てたって、井川のお母さんが教えてくれた。……これがよくなかった」
先輩の手には方位磁石が乗っていた。
「もしかして、風水、ですか?」
「似たようなもんだ」
「呪い、風水、お前、ナニモンなんだよ」
堀先輩は呆れていたが、私は橋本先輩が感じて捉えたことなら信じられると思って黙って聞いていた。
「この家は鬼門にあたる。しかも、一番よくないところに彼女の寝室。ここは、霊道にもなっている」
「れ、霊道!?」
堀先輩が悲鳴に近い声を上げて、部屋を見渡した。
「じゃ、じゃ、ここになんかいるのかよ?!」
私も室内をキョロキョロとして見たが当然見えない。
霊感が少しだけあるとはいえ、見えることは稀だ。
「なに? いきなり人んち来て鬼門だとか霊道だとか失礼じゃない? バカみたい」
悠里が刺々しい言葉でなじる。
私から言わせれば、呪いをやっちゃうほうがそら恐ろしい。
でも。
悠里の変化に、良くないモノが関わってるのだとしたら、説明がいく気がした。
「じゃあ、どうするんですか? 引っ越しを考えるとか?」
橋本先輩が首を横に振って、「試す」と言った。
「何をです?」
ビビった堀先輩がいつの間にか私の背中にくっついているので、暑苦しい。
「俺にできるかわからないけれど、ここに現在居座ってる霊を祓う」
橋本先輩は、ある一点を見つめて低い声で言った。




