ひと を 呪わば穴ふたつ 21
「悠里も知ってると思うけど、同じクラスの朝美がマンションのベランダから飛び降りたの」
薄暗い部屋で、私の声が低く響いた。
悠里は、少しだけ瞳に動揺の色を見せて、「……うん」とだけ言った。
もし、本当にあの呪いをかけたのが、悠里なら、何を恨んで、どんな不幸を願ったの?
「朝美のインスタグラムに、中傷コメントしたアカウントの調査、警察で始まってるみたい。ひどかったもんね、″死ね″ とかもあったし」
これは、カマかけじゃない。
朝美の両親が、SNS上で、いじめにあった苦しみから飛び降りたのだと、被害届を出したのは本当だ。
「あ、あれだけ自慢してたんだから、批判されても仕方ないんじゃない? 別に脅迫されてたわけじゃあるまいし。大げさだよ」
悠里は明らかに動揺している。
「呪い……」
「……え?」
「朝美の髪が入ったペットボトル、私達が見つけたの」
目を見開く悠里の変化を、私は見逃さなかった。
「え?……どうやって? 何であれだけで呪いだって、朝美の髪だってわかったの?」
――認めた。
心の何処かで、朝美に呪いかけた人間が悠里じゃないことを願っていたから、青ざめて唇の端を震わせた彼女の顔を見て、やはりそうなんだ、と失望した。
でも。
「なんで、あそこまでやったの? 朝美との間に何があったの?」
ただの妬みが生霊飛ばしたり、呪いをかけるほどの恨みに変わるだろうか?
その闇を産んだものは何?
パニくったように頭を揺らす悠里の肩に、そっと手を置いてみる。
そういえば、橋本先輩がこうしてくれただけで、落ち着いたことあったっけ。
悠里が乱れた髪を両手でかき上げて私を見た。
「私と朝美って昔、……仲良かったんだよ」




