ひと を 呪わば穴ふたつ 20
翌日。
「まぁ、リリちゃん、わざわざ来てくれたの?」
テストが終わってから悠里の家へ見舞いに行った。
「はい。テストも休んでるし、気になって……」
「体は特に悪いところないみたいなのよー、頭痛い、とか吐き気がするとか、怠いとか、まるで仮病みたいなこと言うだけでねぇ」
悠里のお母さんは、私と一緒に訪れた橋本先輩や堀先輩に少しぎこちない笑顔を見せながらも、部屋に上げてくれた。
「悠里―、弓道部のお友達がお見舞いに来てくれたわよー」
お母さんに案内され、悠里の部屋に近づくにつれ、橋本先輩の表情が堅くなっているのがわかった。
生霊を飛ばす人のまわりは、負のオーラがすごいらしい。
「悠里、元気?」
部屋に入ると、悠里はベッドに上でぼぉっとした顔でスマホを弄っていた。こちらを見たのに、ほぼ無反応。
「もう、この子ってば一日中スマホばっかりしてるんですよ! だから頭も痛くなるの!」
悠里のお母さんが怒って、悠里の手からスマホを奪い取ると、ようやく入口の私と先輩たちが視野に入ったようで、
「ちょ、!? なんで先輩たちまで来てんの!?」
急にいつもの悠里になって、とても恥ずかしがっていた。
布団を被って、小さな子供みたいに拒絶する。
「もう、やだ! 皆 帰って!」
「そりゃないだろ、俺ら心配して部の代表で来たんだぜ」
堀先輩が声をかけるも、布団から出てこない。
「大事な話があって来たの」「寄ってたかってする大事な話ってなんなのよ!」
これだけ嫌がられても、このまま引き返せないと思ったのはなんでだろう?
「少しの間、二人だけで話をさせてください」
橋本先輩は、いつから持ってたのか、方位磁石を手にして一人頷きながら部屋を出て行った。




