ひと を 呪わば穴ふたつ 17
はじめにお祓いの開始を告げる太鼓が叩かれる。
次は修祓というお祓いに先立ち、心身をお祓いする儀式。
祓詞と呼ばれる短い祝詞を奏上したのち、榊でお祓いしてもらう。この時は低頭しなけらばならない。
シン……とした御社殿内に、神主が動くたびに衣擦れの音と、そして禊祓詞を唱える声が響き渡る。
「高天の原に神留ります 神魯岐 神魯美の命以ち ―――諸々の禍事罪穢を祓い給い清め給えと白す事の由を天津神・国津神・八百万の神等共に聞し食せと恐み恐み白す」
唱えながら、目の前の空間・自分の心が神聖な場(高天原)になるとイメージすることが大事だという。
厳かな気持ちで神に向き合い、祈り続ける。
神なんて信じていないと言っていたのが嘘のように、山城リリは、真剣な表情で祓詞を聞いている。
堀は……、何か苦行に耐えるかのようなひたすら我慢したような顔で目を閉じていた。
次に祓いに使われるのは、塩。
普通の食塩では無い、清めの塩が使われ盛り塩する際は、木製や陶器製の器に盛られる。
更にこの塩を水に溶かした塩湯に榊の葉に浸した後、お祓いする対処に降りかけるように使う。
呪いをかけられたペットボトル入りの髪の毛にそれをかけて数十秒後――
俺は、それから黒い霧のような、人形にも見える邪気が離れていくのを見た。
それは、山城リリも同じようで、目を丸くし、おののいた表情で現象を見ていた。
やはり、彼女は霊感があるようだ。
堀は……見えないのだろう。
山城の顔を見て、え、え、なに? と周囲を見回している。
神主が、今度は榊を俺に向けた。
俺も穢れを被っていることには間違いないから、希望は薄くとも、呪いが解けないかと微かに期待して祓いを受けた。
しかし――




