ひと を 呪わば穴ふたつ 14
それは、ハクセキレイという美しい鳥だった。
餌と思って咥えたのか、それとも――
「あれの後を追いかける」
「えっ」
驚く二人を置いて、俺は形代を咥えた鳥を自転車で追いかけた。
ゆっくりと道に沿ってカーブしたり、まるで俺を誘導しているかのような飛び方をする。
「先輩っ」「あほかー鳥追いかけるとか!」
走って着いてくる二人の息切れが聞こえなくなった頃、ハクセキレイがある寺院の敷地内に形代を落とした。
俺は、その場所を確認し、そこがパワースポットであることに気が付く。
″縁切り″や″恨みを晴らす″ で有名な寺院だが、元々は商売繁盛や悪縁切りのご利益がある場所だ。
形代が落とされたのは、駐車場に植えられた木の下。
不自然な土の盛り上がりが出来ていた。
……たぶん、ここに埋めてあるはず。
数十センチほど砂利と土を掘ると、ペットボトルが出てきた。
額から変な汗が滲んでくる。
取り出してゾッとしたのは、その中に、古い十円玉と髪の毛が入っていたからだ。
――おそらく、これは長野朝美の髪の毛だ。
これを使ってどんな呪いをかけたのかわからないけれど、それは、とても邪悪な気を発していた。
祈祷ができないから、完全な祓いは出来ないが……。
「吐普加身 依身多女祓比給比 清女給比」
言霊の力を信じて、この呪文を十回声に出して唱えた。




