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転生陰陽師は呪詛をしたくない【仮】  作者: こうつきみあ(光月 海愛)
八 サヨナラ fourth
209/225

悪と悪 37

 まさかの手作り。


「部活終わってから作ったの?」「そうです」


 受け取りながら、紙袋の中身を見た。女の子らしく一つ一つ透明のフィルムで個包装して赤いリボンが付いていた。


「それと、これ、御守りです」


 山城が手提げからもう一つ紙袋を取り出す。


「うちの神社の合格祈願。橋本先輩なら神頼みしなくても大丈夫だとは思ってんですけど、なんせスタートが遅かったので」


「ずっとしおらしかったさのに、急にお前らしくダメ出しか」


「ダメ出しじゃないですよっ。進学しないと決めてたのは、仕方ない事情があったんだと、何となくわかってたので」


 それが病気じゃなくてホッとしたんです、と山城が笑った途端、


「あ」


 ぐうぅぅ、と腹の虫が鳴った。俺のじゃない。


「これ、早速一緒に食おうか。足らないなら、そこのミスドでドーナッツ食ってもいいけど」


 笑いを堪えて紙袋を掲げる。


「じゃあ、飲み物だけ買ってきます!」


 山城は元気良く返事をし、赤い鼻先をマフラーから出して、数十メートル先にある甘い匂いを発する店を向いた。


「あ、いいよ。俺が買ってくるから」


「でも、」


「一月は山城の誕生日なんだろ? そんときはさすがに共通テストで時間作れないと思うから」


 彼女の誕生日は、一月七日らしい。

 

「じゃあ、お願いします。私、ふつうの紅茶がいいです」


「わかった」


 店内は空いてたけれど、山城は外で自転車のそばで待っていた。

 飲み物を買って近くの公園に寄ると、ベンチが空いていたのでそこに並んで座った。

 北風が吹いてとんでもなく寒い。

 熱かった飲み物も一気に温くなった。


「美味いな、これ」

 

 寒さに震えながら、甘いスイートポテトを頬張る。

 山城も、「お母さんと作りました」と、満足気に食べた。

 マドレーヌも一つずつ食べると、空腹が落ち着いたのか、山城が隣で眠そうな目をした。


「あの島でのこと、無かったみたいに平和ですねぇ」


 公園で遊ぶ子供は居なかったけれど、犬の散歩や買い物帰りと思われる主婦が歩いていて、夕暮れでオレンジに染まったそこはのどかだった。

 確かに拉致事件なんて、よその国の話みたいに思えてくる。


「そういえば、紫音さんからメールが来て、テレビに出たって言ってた」


 不意に思い出して、その時の映像が動画サイトで見れないか、山城もいっしょにスマホを覗いた。


「あ、あった。これ。深夜番組に出てたんですね、知らなかったぁ」


「俺もテレビ観ないから」


 でも。わざわざ教えてくれたってことは、何かあの事件にかかわることが放送されたのだろうか?


  【私には見える。ありえない世界】


 心霊番組?

 何かしらのオカルト番組であるのは間違いないだろう。

 原田も観たかもしれない。


 元アイドルグループの男がMCを務め、ネットやクチコミで話題になっている都市伝説的な噂を、霊能力者や占い師、その他、経済学者や元政治家などをゲストに呼び、スピリチュアルな面とリアルな面で双方から検証するというものだった。


「″本日の噂は、子供達が遊園地から地下に拉致されて無人島で囚われてるという信じられない話を検証してみたいと思います″」


 番組では、観客の笑いの音声が流され、リアル組のコメンテーターからは失笑が漏れている。

 初っぱなから悪意を感じる番組だった。紫音さんがなぜ、こんな番組に出ようと思ったのか。

 二人ともちょっとガッカリした面持ちで動画を見た。









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