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転生陰陽師は呪詛をしたくない【仮】  作者: こうつきみあ(光月 海愛)
八 サヨナラ fourth
206/225

悪と悪 34

 けれども、


 《こうなることはわかっていた》


 電話の滋岡は至って冷静で、俺の心配など及ばないといった感じ。

 両親が寝静まった深夜、聞こえはしないけれど、なるべく声を落として話す。


「議員の市橋さんが殺されて、竹森が逮捕されて、次は……って考えないの?」


 《考えないわけではない。でも、俺は政治家じゃないし、奴らの中じゃ駒じゃないから消しにくいんだろう。一応強力な結界張ってるし大丈夫だ》


「そう……」


 《俺の事より、この前も言ったけど、橋本くんはもう【ゴールド・スター】や【ルーメン】に係わるんじゃないぞ》


「……わかってます」


 《事の発端になった、例のデリヘリ嬢死体遺棄の現場のマンション、あそこも知り合いの住職に頼んで供養してもらったからだいぶ氣が良くなった》


「本当ですか?」


 《ああ。神仏、力を合わせてその場を浄めることもできる》


「ありがとうございます」


 もとは言えば、父さんの会社の事故物件を見てしまったからだった。

 怨霊となってしまったA子は、きっと成仏はしていない。

 まだ、あの島のどこかでさ迷っているのだろうか。


 《君の勇敢な仲間にも言っておいて》


「……え、何をですか?」



 ふ、と、


 ″不要なモノは入れるな。考えろ、調べろ、そして、目覚めろ″


 比良の忠告や、


『未来を悲観するなよ』


『その時は、逃げろ。山でもどこでもいい。自分たちだけでも生きていけるようになれ。それこそ縄文人のように小さなコミュニティでいい、助け合って生きろ』


 舘さんの言葉を思い出した。

 大人は難しい問題をさらりと俺達に投げ掛ける。


 《もし、》


「……はい」


 《困った時》


 シン……とした部屋に、スマホから漏れる滋夫岡の声がやけに響く。


 《悪霊退散や家相のご用命は、ぜひ俺に、と伝えてくれ》


「……は」


 俺は、思いきり笑った。

 なんだよ、もう。

 構えて損したじゃんか。


 《いや、笑い事じゃないぞ。俺は、連中が敷いた社会の中では反逆者で、インチキ陰陽師の汚名着せられたまんまじゃ、確実に依頼が減っていくからな》


 それに陰陽師って、いつまでもできる仕事じゃないんだ、信頼感が大事なんだと言って電話を切った滋岡。

 彼には、視えているのだろうか?


 陰陽道。

 神道や仏教、密教。

 神様や悪魔、精霊や悪霊。

 人間が創りだした全ての偶像や信仰が取り払われた未来が――

 新しい世界が視えているんだろうか?


 そして。

 そこに、俺は、いるんだろうか?





 ✲ ✲

 

 季節は過ぎて、冬。

 全国高等学校弓道選抜大会。

 事実上、三年生にとっては引退試合となり、そこで、俺達は好成績を残すことができた。


【決勝

 男子団体

 南谷高校 12―10 梶木高校】


 スランプを乗り越え、再起した堀の活躍が目覚ましかった。


「堀は、ちゃらんぽらんな奴だと思ってたけど、家出から戻って人が変わったみたいに弓道に真摯に向き合った。その結果だな」


 試合後、顧問達が堀を誉めていたが、本人や俺、山城はその言いぐさに不満を持った。


「俺は、もとから真摯にやってたっつーの」


「″家出″ って言ったな。あいつ」


「私も違和感持ちました」


 以前、山城の父が言ってたように、ルーメンやゴールド・スターのメンバーはごくごく身近に、たとえば公務員の中にもいるのかもしれない。















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