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転生陰陽師は呪詛をしたくない【仮】  作者: こうつきみあ(光月 海愛)
八 サヨナラ fourth
203/225

悪と悪 31

「……おそらく解呪できたと思うよ」


 唱え終わった滋岡が、俺を見て、安堵したような柔らかい笑顔を見せた。


「……本当、ですか?」


「あぁ、多分、十八才で死ぬ呪いは解けたと思う」


「……そう、なんですか」


 元々、前世の記憶が強くなっていく以外、特に呪いを感じていたわけではないから、体に異変はないのだけど、心持ち、肩が軽くなったような気がする。


「ああ。だから死を恐れずに、高校生活楽しみなよ。この時間は二度ともう戻ってこない。若い君が俺は羨ましいよ」


 滋岡が道具を片付けながら、感傷的なことを言った。


「だから、陰陽師としての力は封印して、もうヤバい事には関わらない方がいい。せっかく延命したんだから」


 延命……。

 俺は、舘さんの、″危ないのは滋岡″ だと言ったのが気になって、陰陽師の正装をした滋岡の顔を見つめた。


 ――死相は見えない。


 ホッとして、俺はようやく立ち上がった。


「ありがとうございました。そろそろ帰ります……」


 言いながら、今頃、肩の傷が痛み出す。

 顔をしかめた俺を見て、滋岡が護符をくれた。


「恐らく君の霊能力は落ちてるし、結界もまともに張れないかもしれない。御守り代わりに持ってるといい、それと病院も行った方がいい。あの陰陽師のように原始人とは違うんだから」


「原始人……」


 舘さんのこと。

 仙人の間違いじゃないのか。


「あの人って結婚はされてないんですかね?」


 戸籍がないんだとしたら、難しい話だけど。

 俺が笑いながら尋ねると、滋岡がびっくりするような返事をした。


「結婚はしてないが、事実上の妻と娘がいるよ」


「えっ」


 目を丸くする俺を見て、滋岡がククク……と可笑しそうに笑う。


「冗談じゃなくて?」


「ああ。君も会ったことあるよ」


 そこでようやくわかった。


「まさか、紫音さん……?」


 滋岡が頷いて、「お似合いだろう?」と言った。


「そう言われてみれば……」


 昔、山で修行をした仲だと言っていたっけ。


「ただ彼の立場上、一緒に暮らしたりはできない。ああやって時々お互いに助け合って仕事をこなして絆を深めてる。異能力者独特の関係性だよ」


 そう言う滋岡は、結婚などしないのだろうか?

 ふと思ったが、余計なお世話だと訊かなかった。



「その傷で自転車漕ぐのも辛いだろう。家まで送ろうか?」


 滋岡の厚意も断り、俺は、家を出た時と同じように自転車に跨がって帰路につく。


 真昼の太陽が眩しかった。


 俺は、これから、普通の高校生に戻る。


 親には心配かけない。


 そう誓ってひたすらペダルを漕いだ。



「千尋っ!?」









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