悪と悪 28
とても高い声だ。
聴いていて心地よくなる声質だけど、なんで……今?
「それ、かごめの歌ですよね?」
山城が首を傾げる。
「海にいるあの、かごめ?」
原田と同じで俺もそう思っていたけど、実は違うらしい。
「創造神のうた、日本の歴史の中で、日本の神である天照大神様を女性神にして封印してしまった時の歌だそうよ」
「封印?」
「どういうこと?」
「戦後、GHQが隠してしまった歴史書に【ホツマツタヱ】というのがあるらしいわ」
古事記や日本書紀よりもずっと前、縄文時代に書かれたと言われている。
ヤマトタケの父である景行天皇が残したとされているが真偽は不明。
それにはアマテラスは男性だと記してあるのに、なぜか後に書かれた古事記や日本書紀では女性となっている。
これも真実かはわからないけれど、持統天皇が女性天皇であったため、女性天皇の正統性を訴えるために書き換えられたと。
「日本を快く思っていない輩は、日本の象徴とする天皇家の遺伝子を絶やすためにも女系天皇を正当化したがる。それは今も変わらないわね」
ここ近年、世間で論争されるその話題に俺は関心を持ったことはなかった。
しかし、聞けば、なるほど、とても大きな問題だとわかる。
「でも、なんでそこまで日本の神話を隠したかったんですかね? 戦争関係なくないですか?」
言いながら、山城が軽くおでこにシワをつくる。
「それは、建国の歴史を失った民族は滅亡する、と言われているから」
戦前、歴史の教育で、古事記の話は当たり前にしていたのだと。
これほど近代化した世の中でも、他国では建国にまつわる神話や聖書の話は学校の授業で取り扱うのに、戦後からは、日本人の愛国心を無くすように企てたGHQによって、教科書には、日本の起源を曖昧に記載されるようになった。
「そういえば、うちの社務所にアマテラスの絵が貼ってありますけど、やっぱり女性として描かれてます」
山城は家柄、神話はわりと知っているのだという。
――日本列島は、イザナギ、イザナミという神様が創った。
その後、イザナギから、アマテラス、スサノオ、ツクヨミという神様が生まれた。
三貴神は、国を治めた。
時を経てアマテラスの子孫である神武天皇が誕生する。
神武天皇は、大和朝廷を開き、初代天皇に即位した。
現在の天皇まで、ずっと天皇家という一つの王朝が国の長であり続けている、世界でも稀な神の国。
その誇りも伝統も連中には目障りだったのだと。
「アマテラスを伊勢神宮に祀ったのではなく封印してまで事実を隠したかった背景を考えると、あの歌はユダヤのヘブライ語の解釈の方がしっくりくると思うわ」
かごめかごめは、何千年前に創造神が未来を見て詠んだ歌。
3次元の現在のかごの中の地球に閉じ込められた人類は、5次元(宇宙技術の開放)を目前にしていると詠んでいると。
それを聞けばなんとも壮大すぎる歌だった。




