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転生陰陽師は呪詛をしたくない【仮】  作者: こうつきみあ(光月 海愛)
八 サヨナラ fourth
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悪と悪 24

「山に? 竹森隆の護衛は辞めるんですか?」


 舘さんの車に乗り込む。

 俺は助手席に、山城と原田は後部座席に。


「あの動画配信で顔が割れてしまったかもしれないからな。それじゃ護衛は務まらない……それに」


「それに?」


 舘さんが少し間をおいて顔を険しくして答えた。


「あの島の施設は竹森隆のモノ。全ての罪を擦り付けられて消される可能性もある」


「……怖」


 原田と山城が、闇の世界に絶句する。


「それより、舘さん、病院で手当てを受けなくて良かったんですか?」


 止血してあるとはいえ、刃物に刺された足で運転するなんて普通はできないと思う。


「病院行くくらいなら死んだほうがマシだ」


 舘さんは当たり前のように行って車を発進させた。


「俺が無理な時は、橋本、お前が運転するだろ? トラックができたんだから」


「はい」


 俺は、笑って頷いた。

 ……病院、か。

 なんだかんだと、あそこも闇だらけだな。


 夜の街を走りながら、ルームミラーで山城と原田が眠っているのを確認して、胸に引っ掛かっていたことを訊いてみる。


「舘さんは、連中が開発した薬物のこと知ってますか?」


 比良が俺に打とうとしていた注射液の成分。


『合成薬物によって排他的に活性化された受容体は、新たな細胞を作り出すことが可能になって、それは、人の脳に新しい記憶と行動を作り出すことが出来るんだ』


『人の記憶を消したり変更したりすることもできるから、この技術はDNA編集によって特定の人種のみを殺すことも可能でね』


『遺伝子を少し組み換えれば、自分たちのモノとして特許をとり売ることができる。上は、そうやってAIプログラムを注入した人間をいずれ支配するつもりなんだ』


 あれを、山城が既に打ってしまったかもしれない。

 体内に入った受容体を取り除くことはできないのか。

 このままじゃ、彼女は近い将来、連中の奴隷になってしまう。

 暗闇の中、俺が歯噛みをしていると、舘さんは深い息を吐いて答えた。


「知ってる。俺だけじゃない、政治や医療研究に関わってる者は大体知っている。その計画はもう何十年も前から決まってる既定路線なんだよ」


 何十年も前に?


「規定路線って、それは、覆せない計画なの?」


 まるで大したことじゃないような舘さんの口振りに、不信感を抱いた。


「さぁな。あんまりそういう危機感を日常の中に持ってしまうと、″今″ を楽しめなくなるぞ。深く考えるな」


「考えるなって言われても……既に打ってしまった人はどうすればいいんですか」


 俺は、後ろであどけない顔で眠る山城の顔を見る。

 もし、新しいスマホの健康アプリが何らか作動すれば、彼女は書き換えられた遺伝子によって人格を無視した動きをさせられてしまうてことになる。


「何か、方法は……」


 検索しようとスマホを取り出してみるも、電池がとっくに切れている。


「く、そ」


 苛立ち、髪をグシャっとかきあげる俺を見て、舘さんが苦笑い。


「滋岡の時にも言ったかもしれんが、松葉茶に解毒作用がある。あと、パクチーも体に入ってしまった金属類を排出するし、他にも必ずあるから一人で悶々とするな」


 そう言って、俺の肩をポンポンと軽く叩いた。


「お前も少し寝ろ」













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