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転生陰陽師は呪詛をしたくない【仮】  作者: こうつきみあ(光月 海愛)
八 サヨナラ fourth
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悪と悪 15

 それから少しの間あって、原田が滋岡道中の新チャンネルの動画を見ようとしたけれど、「……なんだよ、さっきまで繋がってたのに」電波がまた途切れてしまった。


「……あれ、エンジンの音が聞こえないか?」


 堀が車の音を聞きつけて、走って入口に寄ってきた。


「うまくトラックに乗れたのか?」


 皆の期待が高まる。


「おい、子供達を順に乗せろ」


 舘さんの声だ。


「弱ってる子から乗せてあげてください」


 山城が、ぐったりした子供を抱えて俺に訴えた。


「うん」


 もちろんそうするつもりだけど、何故だか胸がざわざわした。


「よし、とりあえず俺のシャツでこの子の顔を覆って荷台に乗せよう」


 原田が扉を開ける。


「あ、ま――……」


 “待て”

 止める隙もなく扉の隙間から眩い光が差してきた。

 すぐそばにトラックのテールランプが見える。しかし、外に一歩踏み出し、入口付近を見回してもあるのは木々のみ。舘さんの姿はなくて、運転席を見れば彼の後頭部が見え、降りてこないことに何となく違和感を感じた。


 扉越しに声をかけて、直ぐに運転席に戻ったってか? 


「……――」


「おい。千尋! お前も手伝えよ!」


 皆が子供達を次々に乗せていく中、俺はトラックの運転席窓に近寄った。


「あ……!」


 見て愕然とする。

 運転席に座っていたのは……舘さんだと思っていたのは、セルロイドの人形だった。

 じゃあ、舘さんはどこにいるんだ?

 さっきの声は?


「その顔!」


 トラックの正面側から、ククク……と馬鹿にしたような笑い声が聞こえてきた。人の神経を逆なでするような声が。


「比良……」


 隠れるように俺達を見ていたのは比良と、堀が白魔術師と呼んでいたケンという男だった。

 ハーフみたいな顔立ち。

 いかにも温厚そうな垂れた目。

 悪魔と契約して術を行う黒魔術とは違い、神や精霊の力を借りて術を行なう白魔術師は、それだけで善人に見えた。


「舘さんはどこだ?」


 しかし、こんな奴らに騙された。おそらく舘さんの声は術師が霊にでも出させたのだろう。


「舘って、もしかしたあいつのこと?」


 比良が、ここより数百メートル離れた雑木林を指して笑った。


「!」


 そこには、男達に縄で吊るしあげられている舘さんの姿があった。


「バカな奴。トラック奪いに来たのもケンにはバレバレだっての。あの人、本当に最強の陰陽師?」


 比良が目を細めて、木にぶら下がる舘さんを見ていた。舘さんを縛り上げたのは後から来た船の男達のようだ。

 中国語でなにやらワァワァと話している。


「橋本先輩、どうしたんですか?」


 トラックの荷台の方からひょっこり顔を出した山城が、ケンと比良を見て、ギクリと身体を固まらせた。


「おーい。子供達全員乗せてシート被せたぞー」


 堀もこっちを見て同じような反応をする。


「げ、白魔術師」


 それにはケンがおかしそうに笑った。


「ここの魔術師に白も黒もないけどね。なぜなら神を崇めて悪魔を呼び出し、どちらの力も借りて雇い主のために他人を呪うことをするからね」


 悪魔だけに心酔してても呪術は上手くいかないんだよ、と白い歯を見せる。


「このままトラックの子供達は内臓処理の方にまわされる。お前たちが余計なことをしなきゃもう少し生きながらえたのに」


 比良が離れたところにいる中国人の男を手で招いていた。


「……あいつらが内臓を取り出すのか」


 どう見たって医師には見えない輩。


「俺も手伝うけどね、しかし、今日は大忙しだな。荷台に何人乗ってるんだ?」


 比良がシートを掴み捲り上げて中を覗こうとする。

 中国人が一人走り寄ってくる。


 ――いったい、どうすれば――


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