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転生陰陽師は呪詛をしたくない【仮】  作者: こうつきみあ(光月 海愛)
八 サヨナラ fourth
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悪と悪 8

 俺の首に手をかけたアレスタの目には、今日が初対面とは思えない、凄まじいまでの侮蔑と憎悪が滲んでいた。


「……っ……」


 なんで、こんな外国の芸能人に殺されなきゃいけない?

 すぐそばに落ちた杖を掴もうとしたら、更に力を込められた。

 青い瞳は、澱んだ海のように暗い。

 こんな時なのに、奴の背後にいる守護霊を見た。

 その中には日本人を憎む者がいた。


「“日本人はずっと眠っていればいい”」


 アレスタが言ったのか、彼の背後にいる者が言ってるのか分からなかった。


「……ぐ……」


 酸欠で脳が圧迫されていくのがわかる。

 苦しさの中で朦朧とする俺の脳内スクリーンに映ったのは、遠いイスラムの国――六芒星――。


 “日の国日本はずっと我々の計画を潰してきた”


 アレスタの背後にいる外国人が言った。


 ――白人至上主義のことを言ってるのか?


 そうじゃない、とそいつは言った。

 白いスクリーンに映ったのは、“Ý”という文字。

 Y遺伝子だろうか?

 そしてアマテラス。

 次々に走馬灯のように脳内に送り込んでくる。

 イエス・キリスト。

 キノコ雲。

 墜落した三角形の未確認飛行物体。

 大津波――


 ――何が言いたい?


 いよいよ、何も視えなくなり、頭の中は真っ白だ。

 意識が遠のくその時、


「俺の獲物、まだ殺さないでくれる?」


 聞き覚えのある声が、俺の首を絞めるアレスタの力を緩めさせた。


「人体実験するんなら、さっさとしろよ、猿」


 俺と同じように侮辱の言葉を浴びせられたのは、比良だった。


「イエス。貴方のお望みのままに」


 それに卑屈な笑顔を返して、わざとらしく床に膝をつき、アレスタをエレベーター内に見送る。


「……待て! 手錠の鍵……」


 まだ指先が痺れる手を伸ばしたら、唾を吐きかけられた。


「俺が二階に上がったら、地下の電力は落とす。残った猿は暑さの中死ね」


 組織の仲間のはずの比良や魔術師も、アレスタからすれば同じ猿のようだ。

 閉まるエレベーターの扉の隙間から、侮辱を表す中指を立てる姿が見えた。

 あれのどこが貴公子だ。


「彼は、某国の領土を持たない貴族の出だからね。日本国民に愛されるミュージシャンの裏の顔は、ルーメンの中でも上階級の支配層の人間なのさ」


 比良は淡々と言って、俺の手を引っ張り起こした。


「……なんで、助けた?」


 俺の問いにも、「さぁ」と大袈裟に肩をすくめて見せて、「スタジオでは魔術師と陰陽師が決戦やってて面白いよ」と言い、一人、奥へと消えて行った。


「……」


 良く分からない闇医者だ。

 スタジオに行けば、炎は消されていたが、コスギの黒焦げ死体を脇に、まだ台に拘束された山城と少年を挟んで二人は何かやっていた。

 それを離れたところで見ていた堀と原田は、まるでドラゴンボールみたいだと囁き合っている。


 見ると、一方は、鎌と短剣を使って描いた円の中で、黒魔術師なのに白いローブを纏って何か叫んでいた。


「おお サタン地球の主、ルシファー空気の主、ヘカテ水の女神、炎の主シャイタンよ、私は狼のマントに包まれ、蛇の皮に囲まれて――」


 舘さんは俺が知っている軍畧虎之巻摩利支天法で相手の動きを封じようとしているようだ。


 ――山城は、どうなった?


 二人のバトルを通り越して視線を彼女に向けたその時、部屋が真っ暗になった。

 アレスタが宣言通り、ブレーカーを落としたのだ。








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