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転生陰陽師は呪詛をしたくない【仮】  作者: こうつきみあ(光月 海愛)
八 サヨナラ fourth
173/225

悪と悪

 どのくらい時間が経ったのか――


 壁に掛けられた黄色いクマの時計を見たら、朝の八時になっていた。

 閉じ込められて、怨霊も現れないまま、空腹と疲労感で誰も話さず、まるで時間が止まったようにも感じられる。


「船……着きましたね」


 汽笛が聞こえ、山城が窓から外を見る。

 子供たちは網膜をやられるので、離れたところから船に向かって手を振っていた。


「あれ、一般の見学客はもういないんですかね」


「うん、きっと船員だけだろう、なにせ秘島だから」


「陰陽師さん、ここがわかりますかね」


「鳩がちゃんと間取り図を届けてくれているなら、な」


「それ、宝くじより確率低いだろ?」


 いつの間にか起きていた堀が、【らせんまる】を見て、俺、船酔いするんだよな、と呑気なことを言う。

 俺も船を上から眺め、船上にいる時には気が付かなかったものを見つけた。

 デッキの後部の方に、大きなロゴマークが描かれていたのだ。


 ――八咫烏やたからす


「あの三本足のカラスって、八咫烏つうんだよな? 確かサッカーのマークになってね?」


 堀も気が付いた。


「日本サッカー協会でしょ」


 山城も知っていた。


「竹森財団ってサッカーとなんか関係あるんだっけ?」


 こんな時に呑気な話だけれど、山城が、「前に、お父さんから聞いた事あるんです」と話した内容にひっかかるものがあった。


「八咫烏ってもともとは日本神話に出てくる導きの神らしいんですけど、日本の秘密結社のマークだと噂もあると」


 秘密結社――。


 あまりいい響きじゃないな。

 表と裏の顔があるルーメンと同じような組織ってことだろう。


「それと竹森財団とは何の関係があるんだ?」「さぁ……」


 これもネットがあれば直ぐに検索して出てくるのに。

 そう思うあたり、俺は立派なネット依存だ。

 我ながら呆れていると、船から大きな荷物が運び込まれているのが見えた。

 あれに紛れて舘さんたちが来てくれるはず。

 そう思った矢先、背中に冷たい“氣”が触れてきた。


 振り向かなくても、何が来たのか分かった。

 ゾクゾクッと背筋が凍った。

 

 今度こそ、A子だ。

 

 いや、もう彼女の面影はほぼない。

 鬼や妖怪のようになった怨霊が、祟る人間を探している。

 しかし、今は俺にだけしか視えないらしく、「やだ、また寒気……」と、皆は寒がるだけ。

 俺は目を合せないようにして、


「くるな、お前の祟る人間はここにない」


 と心の中で強く言い切る。

 効果があるかわからない、九字の呪文を唱え続けると、スッ……と案外あっさりとその姿を見せなくなった。

 ホッとして、力が抜けた。


 ――やっぱり、祟る相手はちゃんとわかっている。


 この時は勝手にそう思って、舘さんが現れるのを待った。



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