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転生陰陽師は呪詛をしたくない【仮】  作者: こうつきみあ(光月 海愛)
七 サヨナラ third
170/225

救いと導き 35

 アレスタの他に、もう一人、グループのメンバーもいて何やら楽しそうに話している。

 壁越しなのでちゃんと聞き取れなかったが、「明日くらい欧米人の子供ひっぱってこねーかな」「ヤスのせいでリリースが……」と、拉致や、死んだメンバーのことを笑顔で話すあたり、やはり異常かもしれない。


「……ヤスってのは、雇った中華系マフィアに自殺に見せかけて殺させたっぽい。コスギが言ってた」


「芸能界じゃ皆、闇に気が付いても素知らぬふりして生きてるんだろうな」


 ひょっとしたら政界とおんなじくらい裏の世界に繋がってるのかもしれない。


「あ、あの二人、外に出ようとしてますよ」


 山城が立ち上がり、後を付いていこうとする。


「おい、気づかれるぞ」


「でも、せっかく出入口がわかるのに」


 それもそうかと、皆で用心してついていく。

【エデンの勇者】の二人は、壁と同色の隠しドアに手を当てて、開いたそこから外に出ていた。


 あれもマイクロチップで施開錠できるのか。


「まるでSF映画だな」


「あぁ」


 俺は、連れてきた子供たちにもマイクロチップが埋め込まれていることを思い出し、二人に同じようにかざしてもらった。


 ――開いた!


 こんなに簡単に開いちゃっていいのか?

 皆で顔を見合わせて、不思議な高揚感のまま、一面海と森林のすがすがしい景色を前に、ふわりと一歩と外を出た。


 ――眩しい!


 半日室内にいただけで、こんなに太陽が染みるのだから、ずっと地下に囚われてた子供は目も開けていられないかもしれない。

 心配した通り二人とも顔を抑えてしゃがみ込む。


「あ、なんか聞いたけど、ずっと太陽に当たってなかった人間に紫外線当てたらだめなんだって。網膜がやられるって」


「もっと早く言え」


 堀を軽く突いて子供を抱き込むも、やはり外は無理らしく、「目が痛い」と訴える。

 この子たちの救出は夜がよさそうだ。

 上手くいくかわからないけれど、一旦、中に戻ることにする。

 顔を上げフロアに視線を移すと同時に、皆、固まった。


「羊が自由に動き回っていいと思ってるの?」


 さっきまではいなかった大人たちがずらりと並び、こちらを向いて立っていたからだ。


 はじめに女言葉で発した太った男が、きっとコスギだ。

 ピアスとネックレスはどう見ても女物。

 裾が臍までしかない光沢のあるピンク色のポロシャツに、コンパクトなデザインの白い短パン。足元はビーチサンダル。

 ここはハワイかって思うほどバカンスな恰好。

 俺にはゲイとオカマとホモの違いがよくわからないが、堀を見つめる瞳は女々しかった。


「番犬が、そこで死んでたみたいだけど、お前たちがやったのか?」


 次に、ケビンコスナーをもっと貧相にしたような外人が流暢な日本語で俺達に問いかける。こいつは何者?

 もしやハリウッドスターなのか?


「あれ、白魔術師らしい」


 ボソッと堀が耳打ちしてきた。

 白がいるなら黒もいるのか。


「あんたら、奴隷のくせに! 私語してないでケンに答えなさい!」


 白魔術師はケンというらしい。もしかして日本人とのハーフなのか?


「殺したのは、こいつらじゃないよ」


 と、端っこでタバコを吸っている黒ずくめの恰好をした若い男が、真っ直ぐに俺を見た。


「やっかいな怨霊連れてきたの、お前だろ」




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