ひと を 呪わば穴ふたつ 7
「え……」
私は眉をしかめて、遠目でその写真を見た。
前に加奈に見せた貰った写真より新しいもの?
あの時に見たのは、普通に友達とカフェでケーキ食べてるところだったり、部活の皆での打ち上げだったり、朝美が楽しそうにしてる写真ばっかりだった。
「なんか、この自撮り、暗いですね」
それらに比べ、この一人で写ってるのは、部屋の照明が暗いせいか、それとも、いつもみたいにハイライトなんかの加工をしてないからか、地味でかなり薄気味悪い。
学園のアイドルのオーラなんて微塵も感じられない。
「別に、素の朝美がこれなら、ファンはそれでいいんだよ。気になるのは、彼女の背後にある鏡」
堀先輩が画面を指し示す。
「鏡……?」
薄暗い部屋。
よく見たら、朝美の背後に壁掛け式の姿見鏡があった。
そこには、スマホを手に持ち、自撮りをする朝美の背中が写っている。
髪が長いので、それだけで少し不気味だけれど、よく目を凝らしてみたら、うっすらと黒い影に目を二つくりぬいたような顔らしきものも写っていた。
写るはずのない顔……。
「これ……」
「見た奴は心霊写真だって大騒ぎしてる」
――とてもイヤな感じ。
見るだけで息が詰まる、生身でないもの。
私は、堀先輩の隣にいる橋本先輩の顔を見上げた。
先輩の反応を見たかったから。
しかし、先輩は面倒くさそうにして、堅く結んでいた口を開いた。
「たとえこれがヤバい写真だとしても、俺には関係ない」
「は!? 何言ってんだよ? 《《あの》》長野朝美だぞ? お前だって知ってるだろ?」
「知らない。そんな女」
冷たい返しに堀先輩は顔を赤くしていたが、橋本先輩は知らん顔をして自転車に跨り私と堀先輩を置いて行ってしまった。
「……なんだよ、あいつ。美女には興味ないのかよ。山城には塩くれてやったくせにな」
「知り合いじゃないってことじゃないですか? それにこのネットの写真が心霊だとしても、橋本先輩が塩を持っていけばどうにかなるってものじゃないと思うんですよ」
――この時の私は、まだ何も知らなかった。
「そうかもしんないけどさぁ! せっかく朝美の家にお邪魔できるチャンスだったのに!」
「堀先輩、下心見えすぎです」
――橋本先輩は、私と同じレベルの霊感の持ち主なんだろうと、それくらいにしか思ってなくて。
「しかし、こんな薄気味わりぃ自撮りをアップしちゃうって、朝美ちゃん、相当まいってんじゃね?」
――バカみたいな親近感を抱いて内心少し喜んでいた。
「もう、その写真みせないでください、私も気持ち悪いです」
「そう言うなよ、あ、お前んち神社だろ? 何とかできない?」
「私は神様とか信じてないので」
――橋本先輩があと半年もしないうちに居なくなるなんて、思ってもいなかった。




