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転生陰陽師は呪詛をしたくない【仮】  作者: こうつきみあ(光月 海愛)
七 サヨナラ third
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救いと導き 31

「堀、お前はどうなの?」


 心配したけれど、堀は俺はまだ、と答えた。

 なんでか知らないけどそのチップが不足してるらしいよ、と。


「違う形のチップを開発中なのかな」


 俺は、比良という医師が見せた注射液の中の受動体を思い出した。

 あれはナノチップの部類に入るのかもしれない。


 十畳くらいの広い更衣室には、サーバー式の水やお茶が備えられていて、皆で飲む。

 まさか、ここの水に毒が入ってるなんてないだろうから。

 子供たちは冷たい水を美味しそうに何杯も飲んでいた。


「君たちがいた部屋以外にも、子供達がいる部屋はあるの?」


 うん、と間取り図を描いた子供が頷いた。

 一体、何人が監禁されているんだろう。

 堀が怒りに満ちた顔で、「俺が見た限り……」と話しはじめる。


「拉致された大人も含めて、毎日、3.4人の人間が地下に連れてこられてみたいだ。中には日本人じゃない人も。上にいる連中では、アジア系を好まずに白人の子どもだけを性奴隷にするやつもいるみたいだった。代わりに、虐待死させたり、内臓を取るのはアジア系だとか……中国からの船が来た時は、地下がいっぱいになって、そしてすぐに空く。殆どが内臓目的で拉致されてきた子供が多いからだって」


 話を聞いていた山城が痛ましそうな顔で自身のお腹あたりを触って、そして俺の方を見た。


「あ、先輩、肩から血が滲んでますよ」


「……さっき、鎌持って暴れたからな……」


 元々痛み止めも無しの縫合だったから、痛みに鈍感になっていた。


「なに、鎌って、一体誰と戦ってきたんだよ」


 堀は知らないだろう政治家 竹森隆の息子、竹森浩介の話をした。この島に関わったのは、あいつが殺したデリヘル嬢の霊がキッカケだったことも。


「あー、あの目のつり上がったいかにも性格の悪そうな男かぁ、あいつが、女を犯すところ、何回も見せられた。それを見ながらコスギが俺を触って勝手に一人で昇天するんだよ、マジで変態」


「……私も、もしかしたら、橋本先輩が助けてくれなかったら、ヤバかったです」


 山城が俯いてドレスの裾をギュッと掴む。


「あ、……あの時は演技だったとはいえ、いろいろ済まなかった」


 今さらながら、彼女にキスしたことを思い出して一人で赤面し謝ったが、何故か山城はやや不機嫌になった。


「替えの包帯とか、ここ、ないんですかね? 救急箱くらいあってもよさげなのに」


 それでも、俺の傷を見て心配そうに更衣室内をウロウロとして探す。

 子供達が眠たそうに欠伸をすれば、俺まで眠気が襲ってきた。


「あ、ありました。ロッカーの上に!」


 山城が入口近辺のロッカーの上に手を伸ばした時だった。

 ガチャンと、施錠したはずのドアの鍵が回った。


 全員がビクッと体を震わせ、入口を見た。


「ここにいたか。逃げられると思ったのかよ、クソガキどもが」


 竹森浩介だ。

 取り巻きの男は二人。

 今はちゃんと服を着ている。

 俺が負わせた竹森の額の傷は、きちんとガーゼで覆われていた。

 比良もあっさりと冷蔵庫から発見されたんだろう。


「お嬢ちゃん、ルシファー役は他の奴にやらせるからな。覚悟しておけよ」


 側にいた山城に手を伸ばし、後退りする彼女の首をグイッと掴んだ。


「山城!!」


 堀と同時に叫ぶ。

 山城がまた、奴の手に渡ってしまった。

 俺が持っているのは杖一本、儀式の時のように上手くやれる自信がなかった。


「お前ら、勝手に抜け出てきて、どうなるかわかってんだろぉな?!」


 俺達と一緒にいた子供達を睨み付け、威嚇する男達の手には、サディストらしく鞭が持たれていた。

 それを見ただけで、怯え泣く子供達。


「拷問室に連れていかれて、あの子達は虐待され、最後は殺される」


 堀が眉を険しく寄せてボソッと俺に呟いた。


「おいっ! ウサギの格好した変態野郎! 貴様、今夜こそコスギに掘らせるからな!」


 一人の男が駆け寄って堀に向かってきた。


「俺は変態じゃねぇ!」


 堀が叫びながら逃げようとすると、突如、その場の空気を裂くような銃声が鳴り響いた。


「もう、お遊びは終わりだっつーの、これ、エアガンじゃねぇからな?」


 山城を抱き抱えたまま、竹森浩介がピストルを堀に向けていた。









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