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転生陰陽師は呪詛をしたくない【仮】  作者: こうつきみあ(光月 海愛)
七 サヨナラ third
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救いと導き 27

 奴らは、こんなものを開発して何をする気なんだ?


 まるで、生きてるかのように磁石につられて容器内を動く受動体は、かなりグロテスクだった。


「自分のように組織の末端には、具体的には知らされてないけどね。いずれ何らかの理由をつけて、これを全人類に投与しようとしてるね」


「全人類……」


「これの治験を俺みたいな闇医者に頼んでくる。上は、今は、これをスマホのアプリに連動させて、いずれは、注射を打った人間の特許をとるつもりなんだよ」


 ……特許、だと?


 恐ろしい話は続いた。


「ほら、遺伝子組み換え食品なんて、まさに某会社の特許商品じゃないか。自然発生のものに特許は取れないけれど、それの遺伝子を少し組み換えれば、自分たちのモノとして特許をとり売ることができる。上は、そうやってAIプログラムを注入した人間をいずれ支配するつもりなんだ」


 医者の話はファンタジーみたいだ。

 そんなことが、許されるのか?

 奴らは、アナログな悪魔所業の裏側でそんなことを計画しているのか?


 滋岡の言葉を思い出した。


『映画の【マトリックス】もあながち作り話ではないってこと』



「特許だなんて……そんなこと、打たれた人間が許すと思うか? 人間扱いされてないんだぞ?」


 ファンタジーにしても質が悪すぎる。

 聞いてるだけでムカムカして、俺の ″弱者 ″ の演技は終わった。


「許すようなAIプログラムに書き換えられるのさ。打たれた人間は、奴等が動いて欲しいように動く。その前に個人の能力、病歴、健康状態はアプリで把握してるから、その人間によって頭脳を生かす仕事をさせたり、要らない人間ならば癌にさせたり、不妊にしたりその血統は絶やす。選ばれた人間だけの遺伝子を遺す、そうやって間引きしてより良い地球を未来に残す、これが上の目的なんだよ」


 恐らくね、と溜め息のように漏らした医師が、言葉を失った俺を見て、「ふっ」と、可笑しそうに笑って続けた。


「でもさ、それってそんなに青ざめることかな? 悪いことかな?」


 俺は、俯きがちだった顔を上げる。


「君もだけど、俺も含めて多くの人間は無人島に行って何もないところで文明を起こすことはできない。きっと、家すらまともに建てられない、水も綺麗にできない、電気も作れないし電話も発明できない、今当たり前のようにある文明とは無縁の人間、つまり上にとっては役立たずなの」


「それは、奴等も同じだろう? 千年も二千年も生きてきた人間じゃあるまいし、何もかも自分たちが生み出してると勘違いしてないか? 何様のつもりなんだ」



「過去の偉人の賜物は、全て自分たちの手の中にあるんだよ。自分たちの身内や近い人間にだけそういう高等な知識をつけさせる。だから、殆どの国の大学も、大した内容は勉強させない。奴隷層から優秀な人材が出るのは困るから予め道は閉ざしておく。医者だって、本当に素晴らしい医療は大学では教えてもらえないんだからね」


 病人を増やすばかり、それも上の利権に繋がってるんだ。


 そこまで話して、医者が急に俺の顔を間近で眺めた。


「でも、君は本当に綺麗な顔をしてるね。実験台やコスギのオモチャにするにはもったいないかな」


 さっきまでと違い、湿った視線で俺の顔や処置された肩、腕を見る。


 ――なんだ。こいつ、()()()なのか?


 父親とおんなじ位の年の白髪混じりの男が、興奮気味に俺の背に手を回し、そのまま滑らせて腰のズボンの隙間に手を入れてきたのだ。


「……!」


 ゾッ! とした。


「君がその気になれば、痛い目を見ないでここで暮らせるように取り計らってもいいけどね」


 メガネの奥の瞳に、黒い欲望が垣間見える。


 ――こいつは、きっと、こうして拉致されてきた子供に手をかけて、仕舞いには実験なりなんなりで殺してきたんだろう。


「いい子だから、じっとしてるんだ」


 薄い唇が迫る。


 俺は、瞼をおろしてその時を待った。







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