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転生陰陽師は呪詛をしたくない【仮】  作者: こうつきみあ(光月 海愛)
七 サヨナラ third
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救いと導き26

 うなだれ、ウサギの耳も垂れていた堀先輩が顔を上げて、薄暗い中で目を細めているのがわかった。


「千尋……、山城……お前らも捕まったのか……」


 黒タイツに包まれた脚で立ち上がろうとして、椅子に邪魔され引きずりながらガタガタと近寄ってくる。

 顔はメイクまでさせられ、唇が濃く彩られていた。


「堀先輩……可愛い」


 こんな時なのに、思わず噴き出さずにはいられなかった。


「笑うな! こ、こんなおかしな格好させやがって、あのハゲ!」


「それでお前を弄ぶコスギって男は、いま、どこにいるんだ?」


橋本先輩が笑いを堪えて尋ねると、堀先輩は天井を見上げて答えた。


「芸能関係者は普段、上の養成所にいるんだよ」


 やっぱり、養成所があるんだ。

 昨日の儀式にも、有名人がいるって言ってた。

 本当にここは、……この世界は腐ってる。

 

「上には芸能関係者以外にどんな奴がいるんだ? 地下は雑魚が住み着いて、監禁、殺害、儀式専門みたいになってるけど、地上には暴力団みたいなのとか、SPだとか、手強いのがいるのか? 」


 橋本先輩が、堀先輩の両手首の縄を外す。


「……いや、俺もこの部屋から出た事ないからわからない。でも、コスギが言うには、養成所の他にV・I・P室がある、と」


 

「V・I・P……誰が出入りしてるんだ?」


「政府関係者に、海外の大企業のCEOもいるからそれなりに護衛もいると、あと、専属の魔術師もいるって」


 そんな人達が、こんな島に。

 もしかしたら、表だって有名な人達だけじゃなく、人身売買とかの犯罪組織も出入りするのかもしれない。


 ――私達は、脱出できるのだろうか?


「ここの子供たちは、ちゃんと飯とか食えてんの? 」


 橋本先輩が、手前の部屋にいた子供達のことを訊くと、


「それもわからない。俺は、外の世界を知ってるから隔離されてたっぽい。何しろ、誰も話さないんだ。生まれてからすぐ拉致されてきた子供とか虐待されて口をきけなくなった子供が多数だと聞いた」


 堀先輩は、首を横に振って今にも泣きそうな顔をした。


「……それより、お前たち、どうやってここに辿り着いた? 何で自由に動ける?」


 堀先輩が顔を上げると、ウサギの耳もピンと上がる。


「……俺も、本当はヤバかったんだ」


 橋本先輩が、ようやく、おかしな注射を打たれそうになった話を始めた。



 * * *


「……その、合成薬物はあくまで受動体なんだよね? 何が発信元になって被験者をコントロールするの……?」


 神経質っぽく、いかにも軟弱そうな医者だが、実はサディストなんだろう、俺が気弱そうに尋ねれば、調子を上げて答える。


「今の段階では、まぁ、電波というかマイクロ波数の電子リンクしかないな」


 ――やっぱり。


 話を聞きながら、室内の机にあるパソコンを見て、ここは電波が届いてるんだと確認。

 普通の電波以外にも何かあるのか。


「……でも、その電波だけで本当にコントロールできるの?」


 尋ねながら、俺は、そっと足を拘束するロープをほどいた。


「さあ、俺は医者であっても科学者や研究者じゃないから、良くはわからない。でも」


 注射器を一旦、俺から離した医者は得意気に、「これ、注射器の中身と同じ薬ね」と棚から三角フラスコを取り出し、そのジェル状の液体を注ぎ落とした。


「これに、低周波を流すとどうなるか?」


 それに、何やら機器を突っ込みスイッチを押すと、液体がブクブクと泡立ちながら、次第に濁っていく。


「ほら、分離されて、液体の中で黒く沈んだものがこれが受動体。打った人間の脂肪組織に保存される。打てば打つだけ蓄積される」


 昔、理科の実験で使った砂鉄に似てるな、と思ったら、医者は銀色の重そうな筒状の塊をそのフラスコに近付けた。


「これ、磁石。どう? 受動体がくっついて移動するだろう?」












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