ひとを呪わば穴ふたつ 5
「誰が生き霊だ。そもそもお前みたいな軟弱なチャラ男に憑いて何の得があるんだ? ああ?」
「せ、先生、いたんですか?」
後ろに気が付いた堀先輩が思い切り顔を引きつらせていた。
副顧問の先生は、顔はいかつく、体はとてもガタイがいい。だからこそ矢が刺さっても軽症で済んだんだろう。
「なんで生き霊なんて突拍子もない事言い出してるんだ? オカルトオタクか?」
「い、いや、この頃、俺 的中率下がっちゃってもしかしたら、誰かに恨まれてんのかなぁと」
「己の不調を他人のせいにするな。大体、堀は注意力が足らないから事故起こすんだ。違うか」
「は、はい」
藪蛇だ。
シュンとする堀先輩を尻目に、橋本先輩が自転車をこぎ始めた。
「あ、あの! 橋本先輩!」
思わず今度は私が先輩を呼び止める。勿論、荷台を掴んだりはしてない。しかし、先輩は止まってくれた。
「この前、し、塩ありがとうございました。おかげさまで身体がスッキリしました」
ようやく、お礼が言えた。
橋本先輩は少しだけ頬を緩ませて、何も言わずに去って行ってしまった。
「あいつ、相変わらず無愛想だなぁ」
先生と堀先輩は呆れていたが、私は満足だった。
……先輩がちょっと笑ったからだ。
――――数日後。
「今、二年の女子二人が鬱で学校休んでるんだって」
学校帰り、前を歩く三年生の女子達が話していた。
「一人はあの長野朝美って子でしょ? 芸能人並みに可愛いっていう」
「そこまでないよ。あげた写真はだいたい加工して盛ってあるし、そもそも整形って噂だよ」
「やっぱりねー。私も見たことあるけど、ストーリーもうざかったよね。自分大好き!って伝わってきたもん」
女ってこわいな。
ウザかったら見なきゃいいのに。
バス停で足を止めると、噂話をしていた三年生の姿は見えなくなった。
何となくホッ……。
テスト前なのでベンチに腰を下ろし、単語帳を開いて時間を潰す。
こういう時にSNSやってたら、あっという間に時間はなくなっていくんだろうな。
私にとっては、バスを待つ間も、乗ってる時も貴重な勉強の時間だ。
そろそろバスが来るなと思った頃、
「おい、ガリ勉少女」
いやな呼び方をされて顔を上げると、目の前に堀先輩と橋本先輩が立っていた。




