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転生陰陽師は呪詛をしたくない【仮】  作者: こうつきみあ(光月 海愛)
七 サヨナラ third
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救いと導き 9

「日本古来から伝わる神道というのは、もとはユダヤ教だといわれてる」


「ユダヤ、ですか?」


 舘さんは、俺の前世の記憶にも当然残っていない、日本人の信仰心や常識を覆す話をした。


「古代エジプトから遠い日本へユダヤ教が、悪魔崇拝たちによって歪められ、神道として浸透していった経緯は省くが、その神道の派生である陰陽道は、まさに悪魔崇拝そのものだといって過言じゃないんだ」


 それは、……わかる気がする。

 呪術を使って人を苦しめたり殺めたりしたのだから、合ってると思う。

 それでも父の安倍晴明を神として祀った神社があるのは、最強の呪術師と言われた晴明を破滅と死へ追い込んだ者たちが、彼が怨霊になるのを恐れて急遽、神に上げたのだと聞いたこともある。


「晴明神社の湧水にある、五芒星のマークは紛れもなく、悪魔崇拝の象徴だろう」


 まさに原田が言っていたこと。


「五芒星が逆さになっているものがそうだと言われてますよね?」


「違う。それもサタニストたちがそのシンボルマークを普及させるために長い時間かけて刷り込んだ嘘だ。悪魔崇拝で一番有名な象徴であるパフォメットを思い出してみろ」


「……あの、羊みたいな角を生やしたのですよね?」


「そう。ヤツの額にはしっかり正五芒星が描かれていて、悪魔を呼び出すときに使われている。日本では魔除けのマークだと信じてる者が多いけどな」


 父も、陰陽師だった前世の俺も、自然と悪魔を誘き寄せていたのか。


「神や陰陽道を信仰していながら、事実を知らない人間も多い。しかし、それを悪いことだとは思わない。信じるものは救われるというからな。己が信仰するものが、なんであれ神なんだ」


それは、分かる気がする。


「表と裏、陰と陽。悪魔崇拝者が陰陽道を特別視する理由はここにあると思っている」


 例えば、表向きは楽しいイベントだと世界中で楽しまれてるハロウィンにしても、本来は悪魔崇拝の儀式なのだと。

 社会では子供たちが各家を回りキャンディを貰う。

 しかし、裏では、それに隠されるように生け贄として悪魔儀式の被害者になる子供が多くいるのだという。


 舘さんは、もう一つ、近年、バチカンで起こった聖職者による児童虐待事件の有罪判決を例に上げた。


「表向きは敬虔なふりして、裏では非道に走る。悪魔崇拝者というのは重要なポジションには、表に立つ人間と裏で操る人間を用意するんだ」


 そっちの方が支配を広げやすいから、だと。


「裏……」


 ずいぶんと複雑な話をしたせいか、今頃眠気が襲ってきた。しかし、色んなものが頭の中で繋がってきて、そういえば、と、滋岡道中が言っていたことを思い出した。


「日本の天皇にも、裏で操る天皇がいるんですか?」


 舘さんは、「いるんじゃないかな」と、軽く答える。


「元々天皇って儀式が多い上に、近代は公務が広がってるから、裏で代わりに儀式をこなしている人間がいるのは間違いないんじゃないか」


「儀式……」


 今までの話の流れからすると、いいイメージしないけど、滋岡が知らない方がいいって言ってたのもあって、もうそれについては訊かなかった。


「でも陰陽道が悪魔教なら、なぜ、あなたはそれの本物になろうと思ったんですか?」


 知らないのなら、わかる。

 知っているのに、なんで?


「もとは悪魔崇拝の宗教だとはいえ、俺たちはけして、関係のない子供を巻き込んで儀式をしたりはしない。人間性本来の力と自然の力を借り、己が神だと信じる者の助けを借りて、人々を、災害や呪い、憎悪から生まれる苦しみから解き放つ仕事をしてる。……これが表なのか裏なのか分からないが」


  連中とは、違う、と言い切った。


「しかし、目には目を、悪には悪をってやつだ。竹森隆の息子を含めた悪魔の真似事をした奴らを何とかしない時が来たのかもしれない」


「……子供達、救えるでしょうか?」


 堀は、……もしかしたら、もう手遅れかもしれない殺されたA子の子供は……。


「呪術だけじゃないだろうからな、向こうは。厳しいよ。滋岡道中や紫音が協力してくれたとしても、救い出せるのは氷山の一角だろう」


 もしかしたら、この人も覚悟してるのかもな、と思った。

 たとえ、無事に島に着いたとして、俺に何が出来るだろう。

 考えてるうちに朝になって、目を覚ますと目的地に着いていた。






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