表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生陰陽師は呪詛をしたくない【仮】  作者: こうつきみあ(光月 海愛)
七 サヨナラ third
142/225

救いと導き 7

 * * *


 紫音さんが紹介してくれた ″本物の陰陽師 ″ というのは、やはり、竹森隆のSPの中に紛れていた専属陰陽師だった。


 明日、いや、正確に言えば今日か……。

 俺と一緒に調査船に乗り込んでくれるという。


 彼は陰陽師としての力だけでなく、武術にも長けているゆえ、あのように護衛の形でそばにいるのだと。


 そんな彼が、古くからの知り合いだとはいえ、紫音さんに頼まれたからと、主人を裏切るような行為に出たのは何故なのか。


 そういった話をする機会もないまま、某所にて朝の五時に待ち合わせをすることになった。


 現在、7/19(月)の午前2時。

 俺は、軽く身支度をして部屋を出る。

 本当なら、明日まで学校に行けば夏休みだ。

 高校最後の部活や、両親との旅行も予定されていた。

 しかし、それも、もうなくなるかもしれない。


 家を出る前に、両親の寝室に向かった。


 両親の寝室に入るなんて、幼稚園の時以来かもしれない。

 ドアをそっと開けると、室内の照明は真っ暗ではなく、常夜灯がついて僅かに明るかった。


 二人はサイドテーブルを挟んで、それぞれセミダブルのベッドで眠っている。

 父さんの大きないびきが、俺の足音をかき消す。

 時々、「っ……んぐ」と、呼吸が止まるから母さんが無呼吸症候群を心配してたっけ。

 この頃、顔回り、肥えてきたんだよな、と本人も気にしてた。

 俺が小さい頃、父さんの顔はもっとシャープだったんだけどな。

 順調に中年太りしている。

 母さんを見ると、髪にカーラーを巻いてそれが邪魔にならないように工夫して眠っていた。

 そういえば。

 毎日、どんなに朝が早くても、髪や身だしなみが乱れたところを見たことがない。

 完璧主義な性質。

 そんな母さんの横にある飾り棚には、家族全員で写ったものの他に、俺がまだ赤ん坊だったり、ヨチヨチ歩きの頃の写真が飾ってあった。


『小さいときは、あんなに可愛かったのに』


 何も知らなかった頃は、普通に母さんに甘えていられた。


『もう、あの千尋は、いないのね』

 

 余計な思い出を増やして、()()()が来たとき、悲しませてはいけないと子供らしい子供でなくなった俺は、可愛くなかったかもしれない。

 母さんの中の″橋本千尋″を、この頃で止めてしまった。


 ずっと、淋しい思いをさせて、ごめん。


 そして。

 最後まで、親不孝でごめんなさい。


 俺は、祈るように部屋に結界を張って両親の部屋を出た。


 俺に何かあっても、この人達に悪の手が及びませんように。


 どうか、俺がいなくなっても、二人が悲しみに耽ることがありませんように。













評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ