救いと導き 6
橋本先輩から貰った護符のおかげか、呪われることはなかったけど、一番こたえる報復を食らってしまった。
皆の冷たい視線で体中が痛い。
HRが終わると、入口で、しきりに私に手を振る男子に気が付いた。
「なに、あの眼鏡、必死、ウケる。誰に用?」
周りの女子がヒソヒソと話し、馬鹿にした目で見ていたのは、オカルト研究部の原田くんだった。
「山城さん!」
名前を呼ばれて重い腰を上げる。
「……どうしたんですか? なんかあったんですか?」
呪い関係だったらもう勘弁。
原田くんは教室からの不躾な視線を少し気にしつつ、声を落として答える。
「うん、あのさ、今日、橋本くん休むって言ってた?」
「いいえ。そんなこと一言も……」
「例の参議院議員の人から、また連絡あってさ。内容伝えたくて橋本くんの教室行ったんだけど見当たらなくて」
「え」
またまた嫌な予感しかしない。
橋本先輩、まさか、船に乗りに行ったんじゃないよね?
「……で、その議員さんは、なんと連絡してきたんですか?」
橋本先輩のことは凄く心配だけど、事件の進展も気になる。
「これ、見て」
胸をざわつかせながら、原田くんの持つスマホを覗く。
原田くんは、議員さんとキャリアメールでやり取りしてるようだった。
メールに画像が添付されていた。
「この議員は、市橋さんていうんだけど、同じ党員に、自家用ヘリ持ってる人がいるんだって」
「へぇ、すごい」
「で、その人は、政治家になる前は、パートナーと自家用ヘリで国内制覇を目指してたこともあるんだと。その時に、例の島の上空で写真を撮ってたらしくて」
「……これが……?」
これが、竹本浩介のアトリエ兼ジュピルマン・エンターテイメントの養成所?
砂浜と山しかない島に、工場っぽい施設のような建物が一つだけ。
海外みたいな豪邸想像してたから、ちょっと意外だった。
「で、市橋さんが、今度、島を上空から見て、目で確かめるって」
「どうせなら着陸して調べてくれればいいのに」
無知な私は、簡単な事だと思って言った。
「ヘリコプターって、どこもかしこも着陸できないんだよ。それに、もし、万が一、不当占拠してる外国の軍とかなら、攻撃受けるかもしれないし安易に降りれないって」
「そ、そっか」
そんな危険もあるかもしれないのに、もし、橋本先輩が船に乗って島に上陸しようとしてたら、どうしよう?
不安が一気に募った。




