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転生陰陽師は呪詛をしたくない【仮】  作者: こうつきみあ(光月 海愛)
七 サヨナラ third
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救いと導き 4

「船に乗り込むには、一般公開時の見学の他に、大学や大学院の研究補助員として乗り込むこともできるけど、そっちは難度が上がるかしらねぇ。でも、確実に無人島ある沖に出ると思う」


 紫音さんが試すような目をして橋本先輩を見た。


「いきなり大学に行けるわけでもないし、それは無理っしょ」


 原田くんが腕を組んで考える。


「これは、もう財団の大元に頼み込むしかないんじゃない?」


「大元?」


 私と橋本先輩も、原田くんの方を見る。


「竹森って政治家に、息子のマインドコントロールを解く為に乗せてくれって、それこそ陰陽師が頼めば良くない?」


「でも、もしかしたら、息子のことが公になっちゃうかもしれないし、うん、とは言わないと思うけど」


 私は、ラブホで霊視によって視ることができた竹森浩介の犯罪現場を思い出す。

 マインドコントロール以前に、麻薬で人間崩壊してるんだから、救いようはないと思った。


「私にも娘がいるけど……」


 紫音さんが隣に寄り添う付き人の方を見た。


「もし、娘がそんな立場にいるのなら。悪魔に飼われて人を殺め続ける人生より、苦しくても刑務所や更正施設でまともな人間に生まれ変わってほしいと思うけど、特別なことかしらね」


 橋本先輩は、少しだけ考えて、「あの」と言った。


「本物の陰陽師なら、電磁波による呪いも、黒魔術によるマインドコントロールも解けますか?」





 紫音さんが帰って行ったあと、橋本先輩に家まで送ってもらうことになり、二人きりの時間を過ごす。

 バスは空いていて、二人並んで座れた。


「先輩、良かったですね」


「ん?」


「″本物の陰陽師″ 紹介してもらえて」


「あぁ」


「その方が、調査してくれる議員さんや滋岡さんと、あっちの呪術師と戦って勝てば、拉致されてる子供たち救出できるかもですね」


「うん」


「だけど、その無人島、無法状態なんですよねぇ。勝てるのかなぁ」


 やっぱり警察も味方になってくれないとなると、凄く不安になる。

 アメリカとかなら、勇士の集まりみたいな軍がいたりするんだろうけど、ここ、日本だからなぁ。


「先輩、さっきから上の空ですけど、大丈夫ですか?」


「え、うん」


 窓の方を見て考え事する橋本先輩の横顔はどこか憂いを帯びて、日光の中で消え入りそうだった。

 千年前の呪い。

 死の予言。

 先輩が抱えてるものって深すぎて私には理解できない。

 そもそも先輩って普通の人?……――

 そうだ。

 さっき、紫音さんが言ってた“巫女”。

 あれって本当かな。

 紫音さんから貰った、“願いが叶う護符” を握りしめて、儚い横顔に訊いてみる。


「……あの、橋本先輩って、前世が見えるんですか?」


「あぁ、さっきのあれか」


 先輩がようやく笑みを見せた。


「皆じゃない。たまたま、山城のは……視えただけ」


「そーなんですか? じゃ、堀先輩ってなんだったかわかります?」


「うさぎ」


「う、そ」


 意外すぎて目を丸くすると、橋本先輩がおかしそうに笑った。


「からかってますね? じゃあ、橋本先輩自身はなんだったかわかるんですか?」


 それには、少し沈黙をおいて、


「詐欺師、かな」


 と、また冗談を言った。


「でも、山城が巫女だったってのは本当。それだけは確か。信じられないかもしれないけど、俺と山城は前世でも出会ってる」


 




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