救いと導き
日曜日の昼間に、部活以外で橋本先輩に会えるなんて思ってなかった。
《朝早くにすまない、今日は忙しいか?》
なんと、神社(家)に先輩から電話が掛かってきたのだ。
前に、大人コーデの服を婦人会ってダメ出しされたので、高校生らしく?爽やかな服装にしてみる。
いつもはおさげにしている髪をポニーテールにして、白と茶色のストライプのティーシャツにオーバーオールを穿いて、くるぶしを見せるのがポイント。
スニーカーじゃなくて、夏らしい白いサンダルと茶色のショルダーバッグをさげたら、かなり可愛さアピールできた。
「よし」
家を出る時、お父さんと会ったけど何も言われなかったし、
「五時までに帰ってきたら、携帯電話ショップへ行こう」
と、ようやく買い替えの話をしてくれた。
一体、どうしちゃったんだろ?
待ち合わせは、学校より数百メートル離れたファミレス。
もしかして、やっぱり、そうかなぁと思ったけど。
「うわー、山城さん! 激かわっ!」
ファミレスには、オカルト研究部の三人も来ていた。
……わかってたけどね。
先輩が私とデートしたいと思うわけがないのに。
「ごめんな、急に。例の霊能力者にここで会うことになって、どうせなら昨日一緒にいた皆、一斉にお祓いしてもらおうって、原田くんが」
橋本先輩は悪びれもなく、中に私を誘導する。
淡いデニム生地の七分丈ジャケットにブルーグレーの柄ものティーシャツ、白のストレッチパンツ。
爽やか。
ちくしょ。
今日もかっこいいじゃないの。
イケメンは何着ても似合うなぁ、と見惚れていたら、原田くんが私をじいっと見つめて何か言いたげだ。
「なんですか?」
「あ、いや、そのオーバーオール可愛いっすね」
「え、ほんと?」
「なんつーか、それ、ティーシャツ脱いで素肌にオーバーオールだったらめちゃくちゃセクシーだなって思って」
「は!?」
ばっかじゃないの。
そんなんで外歩けるわけないじゃないの。
「俺、具合悪くって、外も出たくなかったんだけど、山城さんのうなじ見たら元気出てきた」
「俺もー。いいっすね、白いうなじ」
他二人もやたら鼻息荒くて猿かと思った。
肝心の橋本先輩はなんも言わない。チラッと先輩を見たら、駐車場の方に向かって手を挙げていた。
「来たみたいだ。霊能力者の紫音さん」
その、紫音さんというふっくらとした女性はもう一人付き添いの女性を連れて、入口付近の席に陣取った私達に柔らかい笑顔を向けた。
「紫音って、やっぱりあの人かぁ。テレビで見たことあるわ」
「俺も。本物とかって言われてる反面、あまりにも死期の占いが当たるから暗殺のプロとも呼ばれてるよな」
「え、」
オカルト部員が怖いこと言うけど、私には気のいい主婦にしか見えない。
「お待たせ。先に頼んどいて。私、一服するから」
紫音さんはバッグからタバコとライターを取り出して、プカプカと外で吸い始めた。
なんだか、マイペースな人だな。
「先輩、あの人、本当に滋岡さんの言ってた霊能力者なんですか?」
「うん。俺達を守ってくれるらしい」
橋本先輩は、寄ってきたウェイトレスに2つのテーブルに分かれて座ると言っていた。
それぞれ、コーヒーやらドリンクバーで飲み物を取っていると、入店していきなり、紫音さんが顔色悪い部員に、「あなたね」と、席に着くように指示していた。
すごい。
一目見て、呪われてる人がわかるんだ。




