愛と 呪縛 18
「そうだな……」
元 財務大臣 竹森 隆。
あまり政治には詳しくない俺は、彼の事を少しだけ調べた。
8期連続で衆議院議員、経済産業大臣を務め、財務大臣時代には、強国の介入なしを条件にIMF(国際通貨基金)へ数兆ドルの融資を行った。
この事がキッカケで、アメリカも含めた世界の強国を敵に回した、とも言われている。
その後、斡旋収賄罪などの疑いをかけられ、辞任に追い込まれる。息子の不祥事件などもあり、政界の表舞台から姿を消したと言われている。
それでも、今でもあんなに護衛が必要なほど危険な中にいるのか。
「俺を、関係者として中に入れてくれないか? 祓いの儀式が終わってから少しだけ話をしたい」
山城に頼むと、正月アルバイト用の神職の衣装を貸してくれた。
それをこっそり社務所で着替えて拝殿の裏側でその時を待った。
「橋本先輩、す、素敵です」
着替えた俺を、山城が目を潤ませ上から下まで舐めまわすように見る。
俺自身も懐かしい和装に若干、気持ちが上がっていた。
「山城も着替えてみたらどうだ?」
「えっ、そしたら一緒に写真撮影してくれます? あ、てか、スマホないんだった」
「スマホないと不便だな。まだ買って貰えないのか?」
「そーなんです。奪われたやつが戻ってくるかもしれないからって。警察が動いてないのに何いってんだろ」
ぷーっと、小さく頬を膨らませ、むくれた山城の顔はそこそこ可愛い。
意外とマニアックな連中に人気あるのもわかるような気がした。
「あ、終わったみたいですよ」
山城が真顔になって拝殿の表の方を指した。
「……みたいだな」
出てくる政治家らしき男の後姿が見えた。
護衛の男に何か話す横顔を見て、やはり竹森隆だと確認。
俺は、大きく息を吐き、気持ちを高めて近寄って行った。




