愛と呪縛 14
「お前ら、こんなところでなにやってるんだ?」
「先生……」
威圧的な態度で入ってきたのは、弓道部の顧問だった。
「山城……橋本まで。二人とも、弓道部じゃなかったのか? 部活も来ないでこんな所で」
怒りに満ちた目をして俺らを眺める。
山城は、親から部活をするなと言われ、今日は適当な嘘をついて学校へ出てきたらしい。
俺は、怪我を理由に休んでいるが、サボって見えたのか。
「だいたい、ここはよほどじゃない限り使用許可出ないだろう? 胡散臭いオカルト研究部自体、学校は認めてない。とっと出ろ。鍵を返せ」
蔑視に似た視線を向けられ、顔を赤らめていた原田は、それを拒否した。
「清掃する代わりに使用していいと許可貰ってます」
「これのどこが清掃された部屋なんだ? あちこち埃だらけじゃないか」
ますます不機嫌になった顧問が、小姑のように、窓枠の埃を指ですくって、ふっ!と吹いて見せた。
「今からやります。先生も暇なら手伝ってください」
山城が掃除用具入れに向かうと、「もういい、好きにしろ」と、顧問が吐き捨てて出ていく。
肩がいきり立っていた。
「良かったのかあ? あの様子じゃ試合出させて貰えなくなるぞ 」
原田が俺と山城を交互に眺める。
「俺は、ホントに怪我してるから」
試合なんてとっくに諦めてる。
「私、試合より掘先輩の方が心配だもの」
そうだ。
堀のことを思えばあまり悠長にはできない。
「なんか、大事に巻き込まれちゃった感あるけど……ま、いっか。それより、リプで来たこの島、地図では海になってるらしいよ」
【外国を含む複数のサイトの地図に離島が記されているが、日本が管理してる地図には載っていない島があります。福井県と石川県の中間付近です】
「確かに、白いゴマみたいなの浮かんでますね」
山城が目を細めて見る。
「橋本くん、これで霊視できないの?」「無茶言うな」
「日本の領海にあるのかわかんないけど、排他的経済水域には入ってんじゃね?」
原田が拡大してみても、港も表記されてないし、ただの無人島なのか。
「これが、滋岡が言ってた、“ルーメンの活動拠点” や“本物の陰陽師の居所” なのか、それとも“裏天皇の所在地” なのか。行けばわかるのかな」
距離的にいえば、“ルーメンの活動拠点” すなわち、【シュピルマン・エンターテイメント】の養成所兼竹本浩介のアトリエの可能性が高い。
「どうやって行く」
「船だろう」
「どっちにしたって俺たちだけでは行けないんだから、正義感ある芸能人とか議員とかが見てくれるように、もっとネットで拡散しないと。“拉致被害者の島” だって」
「ち、しょうがないな。個人のアカウントでもやるか。裏垢あんだよ」
「俺もー」
オカルト部員が、新たに投稿をする。
滋岡のアカウントが、オカルト研究部に来ていた無人島の写真付きのリプの内容をリツイートすれば、またたくまにアクティビティが増えていく。
とうとう、あるフォロワーが、【数年前、国土地理院の問い合わせたことがあるけど、”実在しない、海だとしか把握してない"と回答がきたことあります】とリプしてきた。
――日本地図から消えた島、怪しいな。
「あ、ら。滋岡のTwitterアカウント、凍結されてんじゃん」




