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転生陰陽師は呪詛をしたくない【仮】  作者: こうつきみあ(光月 海愛)
六 サヨナラ second
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愛と呪縛 11

「……怖かったぁ……」


 真っ青な顔のまま、山城が床にへたりこむ。


「橋本くんは怖くないの? 」


 オカルト研究部員三人がおののいた様子で俺を見ている。


「先輩は、霊能力があるんです。結界も張れるんですよ」


 調子を取り戻した山城がそんなこと言うから、部員たちは奇声に近い声を上げて騒いでいた。


「陰陽師ぃ?!」

「なら、悪霊、お祓いしてくれよー!」


 本来、陰陽師が出来るのは、祓いではなく霊の退散だ。

 父の安倍晴明をファンタジックに描きすぎた映画や本のお陰で、いろんなものが入り混じって陰陽道が誤解されている。


「ここは、必要ないよ」


「そんなこと言わずにさぁ」「怖くてもう入れないって」


 不満を言う部員の声に混ざって、俺のスマホが着信音を奏でる。


 ――滋岡からだ。


 《橋本くんの視たものを先に教えてくれ》


 淡々と短く用件を言う。


 「……俺が視たのは被害者と思われる子供の霊です。他にもたくさんの霊がドアから出入りしてた。向こうに何かあるのは間違いないと思います。……で、滋岡さんは、何が?」


 どうせなら、堀に繋がるものを視ていて欲しい。

 奴の生存を保証できる何かを。

 電話口だからそう聴こえたのか、滋岡は少し声を掠れさせて答えた。


 《竹森浩介のアトリエと、【シュピルマン・エンターテイメント】の養成所はどうも同じ建物内にあるらしい》


 ……やっぱり。

 あの音楽グループのおぞましい、やけにリアルなMV見た時に、普通の撮影スタジオではないと感じた。

 

「それじゃ、あの遊園地の地下か何処かに?」


 《いや》


 滋岡が即答する。


 《あそこは通路の入口で、密航ができる場所に繋がる。そこから船に乗ってほぼ無人島に近い離島にある養成所、すなわち殺人施設に行ってるみたいだ》


「離島?」


 そんなもの日本の海じゃ限られてるし、国内なら誰かに見つかってしまうんじゃないか。


 《それが、日本には地図にも公的な航空写真にも衛星写真にも絶対載らない場所があるんだよ》


 滋岡の声を聴こうと、原田たちが俺の周りに寄ってきた。


「それ、どこです?」


 《【ルーメン】の活動拠点と、裏天皇の所在地、そして本物の陰陽道の隠れ蓑だ》


 滋岡の回答のどれ一つ取っても、俺にとっては想定外のものだった。



 裏天皇ってなんだ?

 ルーメンはわかる。

 日本の中枢機関を乗っ取っているならそれくらい出来るだろう。

 ただ、()()の陰陽師ってどういうこと?

 今、電話で話してる滋岡道中こそ、そうだと俺は思っているのに。


「……今の天皇は、本物じゃないってことですか?」


 軽くパニック状態の俺の声は弱々しい。


 《この話は、難しいから置いておこう。日本の歴史そのものが変わる話だから》


 もしかして、ずっと京都に住んでいた天皇が明治から江戸=東京に移ったのと関係があるのか?


「じゃあ、本物の陰陽師っていうのは?」


 《それも具体的には話せない。ただ、言えることは……》


 俺だけじゃない、皆がスマホの滋岡の声を拾おうと耳を澄ます。


 《世の中、すべてが茶番劇、偽物だらけってこと。映画の【マトリックス】もあながち作り話ではない》


 滋岡の回答は、ますます分からなかった。


 《組織を、この偽物の世界をひっくり返すなんてほぼ無理に等しい。せめて拉致された子供だけでも救いたいと思っていたけれど、それも出来ないかもしれない》


 おまけに、薄い絶望を匂わせた。







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