愛と呪縛 9
霊視って簡単に言うけど。
どこでもできるわけじゃないんだ。
静かな環境と集中力が要る。山城は俺の霊能を知ってるし、多分信じてくれているが、他三名は知らない。
「こえー、橋本くん、目つき鋭いって思ったら霊が視える人だったんだ!」
こうやって不気味がられるのが嫌で、人前でこの類いの力を発揮するのを封印してきたというのに、近頃の俺ときたら……。
「橋本先輩、滋岡さん、先に始めちゃってますよ?」
山城が画面を指さして、期待を滲ませて俺を見る。
――わかったよ。
俺は、画面いっぱいにクローズアップされた違和感ありありのドアを視る。
誰かそこにいるのか?
そこにいる浮遊霊で、何か知ってる者はいないか?
何でもいい、誰か、教えてくれ。
そこは、犯罪組織のアジトに繋がる道なのか?
誘拐された子供がいるんじゃないのか?
「”……ま、……ま”」
ようやく子供の声が聞こえたと思った矢先、
「“ちょっと! 何の撮影ですか?”」
滋岡は、施設の従業員に邪魔をされていた。
「“普通に風景撮影してるだけですが? 遊園地なら写真くらい撮るでしょ?”」
「“こんな所撮らないでください!”」
数人の手が撮影中のカメラのレンズを塞ぐ。
ワーワーと喧騒が続いたあと、この前と同じように配信がブツッと途切れた。
【え、また?!】
【これ、録画でまたアップするんですよね?】
【いったい、何がしたかったんだ?w】
【おーい!】
【ハシモトくーん、視えた?】
コメントだけが継続される中、再び、
――【この動画は非公開です】――
真っ暗なサムネだけが画面に置いていかれる。
「結局、何もわかんなかったですね」
やや不満げにする山城を見て、「すねた顔、萌え!」と部員たちがソワソワする。
俺も、肩すかしを食らった気分でパソコンの画面を眺めていたが、原田くんが、俺のスマホを手に取って、にぃっと笑った。
「良かったな、ちゃんと動画キャプチャ作動させてたから残ってるぞ」




