愛と呪縛 2
「そんなことより」
私は原田くんと先輩の間に割り入り、ちょっと声を落として気になってる件を持ち出した。
「似顔絵とかから何かわかりました?」
「あー……そうだった」
橋本先輩は頷いて、近寄り耳打ちする。
「昨日、滋岡に会って、調査を依頼したんだ。山城の描いた似顔絵も見せたし、犯人たちの言ってた養成所も調べてくれている」
「本当ですか!? 学校サボってオフィスに行った甲斐ありましたね」
警察が動いてくれない以上、スピチュアルなものに頼るしかない。
「あぁ、急がないと、って優先的に取り掛かってくれている」
優先的なのに、そう話す橋本先輩が少し翳りを見せたのが、ちょっと気になった。
「わ、私に何かできることありますか?」
今はすっごく行動範囲が絞られてるけど、学校にいる時間なら先輩と話せるし。
「また、巻き込まれるぞ。あっちは山城のスマホ奪ったんだから、知られたくない情報も握ってる可能性がある。何かあれば直ぐにまた現れる。大人しくしてたほうがいい」
橋本先輩はお父さんみたいなことを言って、私を遠ざけようとする。
「知られたくない情報って、何ですか?」
「え?」
「たとえばこういうのですか?」
私はお守り代わりに持っていた、橋本千尋作・ドラえもんを財布から取り出し、原田くんに見えるように広げた。
「お、ま……え」
いつもはクールビューティーな橋本先輩が顔を赤くして、そのまるで似てないドラえもんを取り上げようとする。
「人に見せるなって!」
「先輩が私をのけ者にしようとするからですよ!」
「え、今の絵なに? NASAに囚われた宇宙人?」
原田くんが、振り回す私の手に握られた絵を必死に目で追っていた。
「違うんです、これは先輩のド……」「わかったから!」
よほど恥ずかしかったのか、橋本先輩が昼休みに昨日あったことを話すから、と誘ってくれた。
しかし、その集合場所がなんだか変だった。
旧校舎の元理科室。
学校非公認オカルト研究部の活動場所らしい。




