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転生陰陽師は呪詛をしたくない【仮】  作者: こうつきみあ(光月 海愛)
五 サヨナラ
111/225

生と死 22

「””軍畧虎之巻摩利支天法”を使うなんて、しかもネットを使って念飛ばしとは。なかなかやるね……”」


 滋岡は視聴者の存在など忘れたように俺にだけ話しかける。


 この法は天皇家の秘法となっており、ゆえに神罰の恐れがあるかもしれないと言われている。

 明治維新以降、陰陽道は神道と一緒に一括りされているが、本来、陰陽師は神など崇拝していなかった。

 魂を成仏させたり厄を祓ったりする神仏とは別の所で生きていて、陰陽道にも様々な神というものがいるものの、呪術としての対象ではあっても信仰の対象ではなかったのだ。

 父、安倍晴明が神罰など恐れていたら、これほど有名にはなってなかったかもしれない。


「”しかし、いいのかい? そんな念では俺は倒せない。どうせなら、人殺しても顕れざる法でも使ったらいいのに”」


 滋岡が冷淡な口調で話すから、チャットのコメント欄がかなり荒れ始めていた。


【滋岡さん、いつもより怖いんですけど】


【え? 殺人しても隠せる呪文とかあんの? w】


 滋岡が言っている呪文は、こうだ。


「おん・そあれりたりた・そわか」

 

この呪を千遍唱えれば人を殺しても表面に出てこない。

 しかし、俺は滋岡を殺すつもりはない。そんなことしたら、堀の救出が永遠にできなくなる。

 俺の躊躇いなど知らず、多くの視聴者に害が及ぶかもしれないのに、滋岡は、ぞの法を使おうとした。


「“おん・そあれりたりた・そわか”」


 目を瞑り、滋岡が静かに唱え始める。

 いや、待て。

 殺さない程度って言ったじゃん。


 俺も負けじと二刀印を結んだ。


「おん・ぶん・ゆうのう・ちんかなう・そわか」


 ”この呪を唱えれば敵竦みて太刀を抜けず”

 つまり、滋岡の動きを封じ込められる。

 繰り返すうち、滋岡の唱える唇が震え出した。

 恐ろしい呪文だが、俺には響かない。

 神を信仰していなくても、念を送るこの場所が最大のパワースポットとなっているせいか、奴の想念より俺の方が今は勝っているらしい。


「……っ」


 それでも限界はやってくる。

 強い電磁波の影響か頭痛がしてきた。


 俺が唱えるのを止めたのと同時に、滋岡からの動画配信が途絶えた。









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