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転生陰陽師は呪詛をしたくない【仮】  作者: こうつきみあ(光月 海愛)
五 サヨナラ
110/225

生と死 21

 呪歌を繰り返し打ち込んでいくと、


【え、なんかやばい奴おる!】【お経!?】


 コメント欄がざわついたあと、滋岡からの配信画像が砂色に変わって、ブツッと途絶えた。


【滋岡さーん! 見えないよー】【電波障害?!】


 俺は自然とほくそ笑む。


 ――呪詛返し、できたかもしれない。


 数分後、再び動画が戻り、滋岡の顔が映った。


「“せっかく遊びに来てくれたのにごめんね、……ちょっと入りが悪いのかな”」


 明らかに先ほどより顔色を崩した滋岡が、何か機器をいじって調整しようとしている。

 気がついてないのか?

 まだコメント見てない?

 調子づいた俺は、真言・密教の外獅印を結び、敵を打ちて疵をつけざる呪文を唱えようとした、が……躊躇った。



 ――滋岡の目的は、本当はなんなんだろうか、と。


 こんな時に思考が振り出しに戻って己の心の弱さを知る。

 やはり、俺に呪詛は向いてない。

 誰かを苦しめる呪いなんてかけられない。

 俺は、南の方角を向き、敵の狙いを知る八葉印を結んだ。


「おん・あにちや・よぐんり・そわか」


 これを、画面の滋岡に向かって繰り返し唱えた。


 しばらくは、滋岡は変わりない様子で視聴者の質問のコメントに答えたりしていた。


「”どうやったらお金持ちになれますか?……これ、けっこう難しそうで簡単なんだよ。まずお金そのものに対して執着を捨てること、お金を運用して幸せになるつもりで強く願って”」


 もはや陰陽師とか関係ない内容だったが、笑顔で話す。しかし、俺の呪文が百回を超えたあたりから、眉を寄せて急に口をつぐんでしまった。


【滋岡さん? どうした?】

【霊でもいた?】

【今日、調子悪いんじゃないですか?】


 視聴者の心配コメントが続いていく中、滋岡が片方の口角を上げて、鋭い声を出した。


「“どうやら、視聴者さんに同業の人がいるみたいだね”」


 コメント欄が湧く。


【さっきのお経のやつ?!】


【呪詛合戦!?】


 目が獲物を捕らえたヒョウみたいに吊り上がった。


「“橋本くん、見てるんだろう?”」


 まさかの名ざし。




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