生と死 16
翌日。
学校に行くと、下駄箱の所で山城リリが俺を待っていた。
「昨日はありがとうございました」
心配していたより元気で、笑顔も見せる。
「うん、むち打ちは?」
あんな風に必死に追いかけたくせに、それが今は恥ずかしくて素っ気なく返事をした。
「今のところ、痛みもなくて平気です」
「……そっか。あ、電話は?」
「じつは」
やはり、昨日拉致された時にスマホを男たちに奪われたと、ショックな声を出していた。
「堀先輩、大丈夫でしょうか?」
「……わからない」
かぶりを振った俺の横で、山城が泣きそうな目をした。
時間が経ちすぎてる。足取りの消えた堀の守護霊を呼び出しても、もう答えてくれない。
「山城、昨日の犯人の顔、覚えてる? 」
山城は頷いて、「はい。なので昨夜描きました。警察署でも刑事さんが特徴を訊いて犯人似顔絵を作成してました」
と、ポケットから折り畳んだ紙を広げて見せてくれた。
凄いな。
「ほんと、絵、上手いな。俺の記憶のまんまの男たちだ」
山城の描いた似顔絵を見て、息を漏らした。
「これで、堀先輩の居場所わかりますかね?」
俺の霊視を信じてくれている彼女が、これを俺にくれるという。
「夏休みが始まる前に、堀先輩が救出されたらいいんですけど」
「……そうだな。試合に向けてまた合宿もあるしな」
堀や俺にとっては最後になる部の合宿。
試合に出る云々以前に、高校の良い思い出になるはずだ。
……思い出?
思い出を作りたいのか。
自身の気持ちの変化に戸惑う俺へ、
「警察に誰にも話すなと言われたんですけど」
山城は他の情報もくれた。
「【シュピルマン・エンターテイメント】の養成所に私を連れていくって犯人達が話してたんです」
それは、【エデンの勇者】の芸能事務所の名前だった。




